日本電産、下方修正でも「楽観ムード」のわけ カリスマ経営者・永守会長の警告を読み解く

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1月18日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルが「ムニューシン米財務長官が対中国関税の取り下げを提案した」という観測記事を載せた。この報道について、トランプ政権は否定する声明を出したが、中国経済が失速すればアメリカ経済も傷を負うため、トランプ政権が強硬姿勢を後退させるという見方がある。

中国当局の経済テコ入れ策への期待も強い。2018年の中国のGDP成長率は6.6%と28年ぶりの低水準となった。リーマンショック時に中国政府はいち早く景気刺激策を打った。今回も、減税や追加のインフラ投資などの対策をとり始めている。

中長期的には自動車の電装・電動化の流れは変わらず、省人化需要によるロボット向けのモーターの伸びも見込めるといったように、同社の事業の先行きをポジティブに見る向きが多い。

電子部品の下方修正ラッシュは不可避

ある大手電子部品メーカー首脳は「おかげで決算発表をしやすくなった」と打ち明ける。別の電子部品メーカー幹部も「気が楽になった」と明かす。

ほかの電子部品メーカーもこの先は業績予想の下方修正は避けられそうになく、株式市場で「日本電産ショック」が起こらなかったことで、自社の決算も出しやすくなったと考えているようだ。

とはいえ、いつまでも楽観ムードが続くと考えるのは危険かもしれない。そもそも日本電産はリーマンショックの直後の2009年3月期に3割の営業減益ながら黒字を維持。2010年3月期には5割の営業増益でカムバックしてみせたように、楽観論はやはり実績に裏打ちされている。ほかの企業が下方修正した時にも株価が底堅く推移するとは限らないからだ。

また、永守会長は「経済の原理原則ならわかるが、政治要因は読めない」とも話している。リーマンショックは経済問題だったが、今回は貿易戦争という政治要因が引き金になっているだけに、各社の業績や株価の先行きはより不透明といえるのではないか。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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