44歳初婚で2児の母になった人の怒涛の生活 35歳以上婚する人が直面する「連れ子」問題

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気持ちが最も落ち込んでいた時期に再会したのが、現在の夫である和弘さん(仮名、46歳)だ。学生時代に入っていたアウトドアスポーツサークルのコーチで、日本代表として海外の大会にも出場した経験のある猛者。愛する妻と長男、長女がいて、由貴さんとの間には恋愛感情はまったくなかった。

「彼は社会人になってからもコーチをしていて、自分が世話している選手が活躍している時期でした。生活が充実していて楽しそうでしたね。その姿を見て、『私も頑張らなくちゃ。コーチに心配をかけたくない』と思いました」

由貴さんは恋愛ではなく仕事に打ち込むようになり、少しずつ心身の健康を回復していく。しかし、2年後には和弘さんの人生が暗転した。妻ががんで他界してしまったのだ。その年の夏、和弘さんは子どもたちを連れて由貴さんに会いにきた。そして、なんといきなりのプロポーズ。両親は高齢なので頼りにできず、境遇が近い由貴さんにすがるような気持ちだったのかもしれない。

「長女が父親にベッタリとくっついて離れないので、まだ小学校1年生なのに甘える人がいない長男は寂しかったのでしょう。すぐに手をつないで私に懐いてくれました。当時の私は仕事が楽しかったけれど、39歳になっていたので『結婚するならコーチしかいない!』と思い込んだんです」

和弘さんからの少々性急なプロポーズを承諾。昔なじみの彼ならば由貴さんの事情を詳しく知ってくれているし、長男が「お姉ちゃんなら、いい」と言ってくれたことが大きい。

「ママ」と「お母さん」

一方、和弘さんへの依存心が強い長女との関係は現在に至るまで難しさが続いている。亡き実母を「ママ」と慕い続け、由貴さんが叱るたびに「ママがいい。お母さんは嫌い」を繰り返すのだ。

「今、長男が中1で長女は小4です。2人とも年齢の割に幼いところがあり、学校に行く時間を守ったり身の回りを片づけたりすることができません。朝の準備をしないでいるので叱ると泣き出す始末です。娘にはとりわけ甘い夫が構うほどにわがままになって……。

私が後から『何で母親なのに子どもたちを最優先にできないんだ』と夫から叱られて、仲間外れにされてしまうこともありました。ノイローゼぎみになり離婚をにおわせたら、『君がつらいなら別れてもいい』なんて言うんです。子どものために結婚を急いだのはそっちでしょう、と言ってやりたい」

由貴さんのストレスを緩和してくれたのは和弘さんではなく、同じく「継母」の仲間だった。再婚家族の集まりに参加して、連れ子と生活している人はみな同じような経験をしていることがわかった。とくに初婚の母親は悩みが深いようだ。

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