2019年の鉄道業界、注目のトピックはこれだ 新幹線はスピード試験で競演、西武に「新顔」

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財務省はJRが支払っている整備新幹線の線路使用料(貸付料)を増額して充当する案を打ち出したが、JR側は反発。当面は財政投融資を活用した資金や国の負担増などで賄うことで落ち着いた。

もちろん、これだけでは不十分で、2019年度以降にこの問題が再燃することは必至だ。

そもそも九州新幹線西九州ルートは開業後も難題を抱えている。当初は新幹線と在来線の両方を走れるフリーゲージトレインを開発して、在来線区間も乗り換えなしに運行する前提。新大阪から長崎まで1本で結ぶ構想もあった。が、技術的なメドが立たずに構想は頓挫。新幹線と在来線を乗り継ぐ移動となり、開業しても大幅な旅客需要増は見込み薄だ。長崎県は在来線区間の新幹線化に期待するが、ここにも財源の壁が立ちはだかる。

全国各地が「次の新幹線」を要望

東京(品川)─名古屋間ではリニア中央新幹線が2027年の開業に向け工事進行中。その後は新大阪までの延伸が控える。完成すれば東京・名古屋・大阪がより短時間で結ばれることになるが、南アルプスなどでの難工事はこれから。今後も予断を許さない。

これらの計画が終わっても、新線建設は打ち止めではない。山形新幹線、秋田新幹線は「新幹線」と名乗りながら、実際は在来線だ。そこで、山形・秋田両県は「奥羽新幹線」「羽越新幹線」という本物の新幹線の実現を要望している。新幹線がない四国も官民挙げて新幹線の誘致に声を上げる。日本海側を走る「山陰新幹線」という構想もある。

高度成長期のように新幹線が高い経済効果をもたらす時代はとうに終わっている。こうした「次の新幹線」の実現に必要な巨額の建設費にどれだけ理解を得られるか、関係者にとっては、頭の痛い1年になりそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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