中後悠平、二度「戦力外」を受けた男の恩返し 理解者だった義父と突然の別れ、激動の1年

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解雇を告げられた遠征先からの帰路。

片道13時間の道のりをバスで移動しなければならない中後は、いつもなら狭い座席に身を埋めて眠りにつく。しかしこの日は、さすがに眠りにつくことはできなかった。6月というシーズン途中での自由契約に、次のチームが見つかるのだろうか。マイナーで頑張ってきた自分を、評価してくれているチームがあるのだろうか……様々な思いが頭を駆け巡っていた。

二度目の戦力外通告を受けた時を振り返る中後悠平。『プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男達』(TBS系)は12月30日(日)夜11時から放送です(写真:TBSテレビ提供)

「中途半端な時期に辞めたら、なかなか仕事なんてないでしょうし。メジャーの残り29球団のうち、どこかから今年だけでも話をもらえたら……という気持ちでしたね。見てくれている人もいるんじゃないか……と微かな望みを抱いていました」

バスが出発して5時間ほど経った時、重苦しい気持ちを抱えた中後のスマートフォンが鳴った。それは、日本に残してきた妻・光からだった。妻にはクビになったことはすでにメッセージで伝えていた。

しかし、その電話の内容は、戦力外通告を受けたこと以上に、中後にとって衝撃的なものだった。敬愛する義父が、癌と宣告されたことを告げる電話だったのだ。

「『いつ日本に帰ってくるの?』『まだアメリカで頑張るの?』とか、そういう電話だろうと思っていたんですよ。でも、お義父さんが癌と言われたという内容で。クビを言い渡されたことよりも、そっちのほうの衝撃が大きかった」

父の日に「2つの宣告」を言い渡された中後

中後が、自身の戦力外と義父の癌という2つの宣告を言い渡された2018年6月17日。奇しくも、その日は父の日。車窓から見える夜景が、やたらと目に染みた。

両親が遠方に暮らす中後にとって、義父は尊敬できる第二の父親のような存在であり、良き理解者でもあった。中後が千葉ロッテから一度目の戦力外を通告された時、前年に結婚したばかりの妻のお腹には、一つの命が宿っていた。

プロ入りした時は独身だった中後にも、すでに守るべき大切な家族が増えていたのだ。それでもまだ、自分の可能性に挑戦したい気持ちが胸にあった。逡巡する中後の背中を、義父が力強く押してくれた。

「結婚して、子どもができて、ロッテをクビになって、それでも野球をするなんて、普通の親やったら許せないですよ。でもお義父さんは、『まだやれるんだから、どこでもいいからやれ。気が済むまでやれ。どうにかするから』と言ってくれて。

アメリカの話をもらった時もすごく前向きに応援してくれて。『家のことは任せろ、子どものことも任せろ、どうにかなる』って、ずーっと言ってくれて」

中後のアメリカ行きに際し、妻と生まれたばかりの長男は、神奈川県三浦市に住む義父と義母が面倒を見てくれることになった。そしてオフに中後が帰国中には、その家で同居させてもらいながら近所の野球場や公園でトレーニングを積んでいた。

中後を実の息子のように気にかけ、影になり日向になり支えてくれていた。そんな義父に、中後はメジャーで活躍する姿を見せることで恩返しをしたいと考えてきた。

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