日本育ちのカメルーン人が漫画に込めた思い 見た目外人・心日本人の彼の唯一無二の視点

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「ひとかどの人物になる方法を見つけたいと思っていました」と彼は言う。「そこで、給料の中から貯金をして、工場の仕事を辞めました。それから6カ月の間、毎日図書館へ通って多くのことを勉強しました。お金の稼ぎ方、そして心理学や科学など、あらゆることを勉強しました。毎朝起きて朝ご飯を食べてから、図書館へ行っていました。5時の閉館まで図書館で過ごし、帰宅して夕飯を食べ、翌日も同じようにしました。やがて僕は変わり、新しい人格を持つ別人のようになったのです」。

結局、貯金が底をつくまでこの生活を続け、その後、職を得たレストランで働くようになった。そこでルネは客と話をしたりするうちに、図書館で過ごした時間がいかに自分を変えたかを知った。彼は他人の目を通して自分自身を見いだしたのである。

日本語を流暢に話さないよう求められる

「お客さんの中には、僕のことを天才だと言う人もいました。僕が魅力的な人生を送っているとか、僕の話は日本人には非常に受けるだろうと言う人もいました。多くの人たちから、東京に行って夢を追うよう勧められました」

そこで26歳にして、彼はテレビタレントになろうと東京へ移り住んだ。しかし、今度はテレビ番組のディレクターたちとの問題に直面する。

「彼らは僕に流暢な日本語を話さないようにとつねに要求してきました。日本の視聴者は、変な日本語を話す外国人というステレオタイプのほうが面白く感じるからです。若かったし成功するチャンスを望んでいたこともあり、しばらくは言われたとおりにしていましたが、僕には日本の黒人のイメージを変えたいという思いがありました。そして、日本人の黒人として自分を表現したかったのです」

「自分が中学生だった頃のことを覚えています。僕はボビー・オロゴンのようなタレントが好きではありませんでした。彼らはとても愚かに振る舞っていて、日本の人々に黒人は愚かだとの印象を与えてしまうからです。日本のスタッフは、僕もそういったキャラクターになるべきだと考えていました。しかし僕はその役割をしたくありませんでした。そこで僕は、考えを自分流に発信できる場所を見つけたいと思ったのです」

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