文在寅大統領は「不通外交」を改めないのか 国際社会で孤立なら、北朝鮮も相手にしない

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さらにこの南北首脳会談では、韓国と北朝鮮をつなぐ鉄道や道路の連結工事の実施や、北朝鮮の開城工業団地、金剛山観光事業の正常化なども含まれていた。これらは北朝鮮に対する国連安保理事会の経済制裁決議に明らかに反することから、アメリカはこの合意にも不快感を隠していない。

その結果、アメリカの要求で上記のワーキンググループが作られたのである。初会合後に、ポンペオ長官は「互いに異なることを言わないことや、相手が知らない、あるいは意見や考えを提供する機会を持てない状態では、アメリカや韓国は単独行動をしないことを確認できるようになった」と述べている。要するに「勝手なことをするな」と言っているに等しい。

腕力を振りかざすような外交はアメリカがよく使う手法で、決して褒められたものではない。韓国にとっては屈辱的な会合だろう。しかし、文大統領の「不通外交」がこうした事態をもたらした側面は否めない。

欧州でも呆れられた文大統領の提案

文大統領の暴走ぶりは南北首脳会談後に拍車がかかった。10月中旬の欧州歴訪では国連安保理常任理事国である英国のメイ首相やフランスのマクロン大統領らと次々と会談し、北朝鮮に対する国連制裁の緩和を求めた。南北首脳会談の合意を実行するために障害を取り除こうとしたのだろう。

しかし、北朝鮮の核・ミサイル問題に何の進展もない中で、制裁を緩和する理由はない。文大統領は会談相手に要求を断られただけでなく、逆に「北朝鮮への圧力は維持すべきである」(マクロン大統領)、「現在の措置だけでは不十分」(メイ首相)などと切り返されてしまった。北朝鮮に対する国際社会の厳しい視線を理解していない外交の当然の結果だった。

そして、肝心の北朝鮮も韓国に対し冷たい反応を示し続けているのである。韓国政府は文大統領の平壌訪問の答礼として金正恩(キム・ジョンウン)委員長の年内訪韓をしきりに働きかけていたが、どうやら実現しそうにない。文大統領は国連制裁緩和を呼びかけたが、誰にも相手にされなかった。したがって南北首脳会談で合意した経済協力は実現しそうにない。

だから今、金委員長がソウルを訪問するメリットは何もない。北朝鮮はそう考えるだろう。むしろ非核化をめぐるトランプ大統領との首脳会談を優先したほうが得るものがあると考えているかもしれない。したたかさという点でいうと金委員長のほうが文大統領よりも上手(うわて)だろう。

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