中国がGDP世界1位を狙うたった1つの理由 「統計データ」から読み解く国際情勢の現状

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なぜ、人民元が安くなると困るのか。自国通貨が安くなれば輸出に有利なように思えるかもしれないが、為替が過度に不安定になることは望ましくないし、米国などから「元安誘導をしている」と非難されかねない。さらに、中国にはもっと大きな理由がある。それは、中国が「世界一の経済大国」を目指しているからだ。ここで見ておきたいのが、GDPランキングだ。

GDP世界1位が中国の悲願

1位がアメリカで約18.6兆ドル、続く2位が中国で11.2兆ドルとなっている。この順位を逆転させ、中国が世界1位になることが、中国の悲願だ。

しかし、GDPの数字はドルベースで計算されるから、あまりに人民元が安くなるとドルベースでGDPが増えなくなってしまう。下手をすれば、GDPが減少することにもなりかねない。対外的に体面を重んじる中国は、それは絶対に避けたいところだ。それゆえ、中国は過度な人民元安を避け、ある程度のレートを維持したいというわけだ。

そこで中国人民銀行は、今度は逆のオペレーションをすることになる。つまり、外貨準備として持っている外貨を売って人民元を買い、人民元のレートを支えているのだ。かつて4兆ドルあった中国の外貨準備高が3兆ドル近くにまで減っているのは、これが原因であった。現在はなんとかこの水準を維持しているが、言い換えれば、この統計にある2017年末での3.2兆ドルという数字には、中国経済の先行き不安がくっきりと表れているのである。

中国のGDP自体は、成長率は鈍化しているものの、現在もなお伸び続けている。一方で外貨準備高はこのように急減している。この先、米中間の貿易摩擦が再び過熱するようなことになれば、人民元がまた売られ始めることだろう。来年の外貨準備高の数字にも注目したい。

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