航空業界は旅客需要減退で追加コスト削減策が必至《ムーディーズの業界分析》

コーポレートファイナンスグループ
VP−シニア・アナリスト 廣瀬和貞

 急激な燃料価格の高騰が一服した後、経済環境の悪化が航空旅客需要の減退を招き、航空業界の見通しには暗雲が立ち込めている。  日本の航空業界においては、現在ムーディーズが格付けを付与している大手航空グループ2 社以外の国内航空会社は、新興航空会社であり、市場における存在は依然として小さい。この2 社寡占の市場構造が、大手2 社に値上げによる価格決定権を与えてきた。

 燃料コスト高騰と旅客需要の伸び悩みを背景に、大手航空会社2 社は増収とキャッシュフローの改善を目指して、顧客単価を引き上げ、かつ不採算路線を削減してきている。この傾向は今後も継続すると見られる。

 但し、航空旅客需要は国内線、国際線ともに頭打ちとなっており、2008 年3 月期の日本市場の総航空旅客数は、前期比で1.6% 減少した。日本の航空業界の競争は主として大手2 社間で繰り広げられているが、2010 年の羽田空港拡張が迫る中、その競争は激化するであろう。2 社の内、競争に先行しているのは全日本空輸(ANA) である。2002 年の旧JAL と日本エアシステムの統合による競争激化に直面する中でコスト削減策を実施して以来、ANA グループのキャッシュフロー生成能力は改善してきた。加えて、増資の成功とホテル事業の売却により資本構成が強化された結果、同社の財務構成は著しく改善した。財務の柔軟性の改善によって、同社は羽田空港拡張をターゲットとした機材配備の合理化を行い、市場地位を強化して行くと見られる

 ANA の後を追うのが日本航空(JAL) である。同社は再建計画に従い、人件費等固定費の削減、路線ネットワークのリストラを進めた。その結果、2008 年3 月期には、燃料単価が上昇した中で、通期の燃油費総額を対前期比2% 削減することに成功した。グループ全体でも、退職給付費用の削減という一過性の利益を含むものの、900 億円の営業利益を達成した。財務的にも、増資とカード事業の売却により一定の財務構成の改善を行った。

 今後は、航空旅客需要の減退、特に両社が注力している高単価のビジネス客・個人客の需要の動向に注意が必要である。両社とも、2009年3月期第2四半期(08年4~9月)決算発表のタイミングで通期の業績見通しを下方修正しており、追加的なコスト削減策の実施を迫られる状況になっている。

図表1:ムーディーズの格付け対象航空会社
社名 格付け 見通し
全日空 Baa3  安定的
日本航空インターナショナル Ba3 ポジティブ

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