視聴率に歯止め、フジテレビ「復活」は本物か 宮内社長「フジの得意技が成果を出し始めた」

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――フジ・メディア・ホールディングスとして、フジテレビが増益を続け、グループを牽引する中期経営計画を発表しています。このような組み立てになった理由は?

グループの中核であるフジテレビが頑張って利益を上げないと、増益体質にならないという思いからだ。売り上げや利益の基になる視聴率が本当に上がるのかという声もあったが、業績が上がれば番組の企画や制作に投資できるお金も増えていく。間違いないように手を打つことで、視聴率を上げることができると思っている。

――6月に公開した是枝裕和監督の『万引き家族』(フジテレビが制作)は興行収入40億円超のヒット。7月公開の『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』も90億円を突破するなど、歴代実写邦画でも指折りの作品になりました。

コード・ブルーは2017年の月9ドラマでも、見逃し配信や(録画視聴を含めた)総合視聴率でいい数字を出していたので、早めの映画化の話が出てきて、これは来るぞと思っていた。ドラマから映画のヒットにつなげるという、フジテレビの得意技がようやく、何年かぶりにできたと思う。

Ⓒ2018『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』製作委員会 ドラマ制作とほぼ同時期に映画化が企画され、早いタイミングでの公開となった。日本実写邦画史上屈指のヒット作だ

今、テレビの広告収入だけで生き残れると考えている同業他社のトップはいないだろう。プラスアルファの利益の源泉を作り出していくという点では、『万引き家族』や『コード・ブルー』のような映画の大ヒットがあり、今期は助けられている。私が社長のときにこうしたヒットが出てきたのはありがたいことだ。月9ドラマが2ケタの視聴率を取るようになり、イベントもヒットしている。このような連鎖をさらにつなげていくことができれば、中期経営計画も順調に達成できるのではないか。

3年先見据え、今から手を打つ

――宮内社長が今後、力を入れるポイントは何でしょうか?

まずはこの3年間で中期経営計画どおり、フジテレビとしても、グループとしても利益を出し、次の投資につなげていきたい。さらに、3年先に何に投資していくかを考え、今から手を打たなければならない。配信事業やイベントなど、選択肢が多すぎて悩んでいるところだ。

――社長就任時のインタビューでは、視聴者との感覚のズレ、心のキャッチボールができていないことが視聴率低迷の原因と分析していました。

キャッチボールだってエラーはある。ズレはあってはいけないというものではなく、精度の問題だろう。ズレがまったくなければ、これまでなかったような新しい番組にチャレンジすることもできない。視聴者との差が埋まってきているからヒットが出始めているのだと思う。大事なのはヒットをつなげていくことだ。

コード・ブルーでは、多くの視聴者の方がドラマを見て感動して、映画館にも集まっていただいた。そういう場を作ることも仕事だ。テレビ番組はもちろんだが、美術展などのイベントも含め、人々の心の広場を作るというか、そんな役目があるのではないか。テレビ局として、そんな仕事をたくさん手がけていきたいと思っている。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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