前田裕二氏「GAFAには、弱点があると思う」 「精神の奪い合い」が次世代ビジネスの主戦場

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食事をしている際も、本来であれば100ある精神を100相手に向けていたのに、今はみんなスマホを見たり、LINEを見たり、「そこにいない誰か」に精神を振り向けていますよね。100のうち、70を目の前の人、30をスマホの中の誰かに割く。そうすると、無意識のうちに、相手は少し(この例においては30)、なんとなく寂しさを感じる。この流れは、もう不可避です。しかし人間は本来、触れ合いや絆がないと生きていけないはず。そのギャップによって、寂しさが肥大していく。

そこで、その寂しさをしっかり受け止め、補完するようなサービスが、インターネット上で覇権を取る未来を想像します。寂しいな……と感じて家に帰り、向かう先は決して、GAFAではありません。所得でも時間でもなく、精神を奪える主体が現れれば、それは、世界を席巻するでしょう。

――可処分精神を奪い合う時代に入った場合、GAFAのようなテックジャイアントが支配する世界は、今後どうなっていくとお考えですか。

端的に言うと、「集中から分散」への流れが生まれると思っています。現代は、GAFAのような限られた少数のプレーヤーが権威を持り、隆盛を極めています。こういった中央集権的な世界から、今後はよりニッチで小規模なコミュニティーがそれぞれに並列して存在するような、自律分散的な世界に移り変わっていくだろうと考えています。たとえば、最近は100人から1000人規模の「オンラインサロン」と言われるコミュニティーが盛り上がってきていますね。ここに参加している人々は、サロンの中心人物に対して、非常に大きなマインドシェアを割いている状態だと言えます。

たとえば、キングコングの西野亮廣さんのオンラインサロンには、現在約1万人が参加しています。彼らの多くは、西野さんのことで頭の中がいっぱいです。いつも西野さんのことを考えていて、その動向や発言を逐一追ってしまうわけです。西野さんにはある種、良い意味で教祖のような性質があると思っています。まさに、「可処分精神を奪う主体」と言えるでしょう。

双方向性がキモになる小規模コミュニティ

オンラインサロンのような小規模コミュニティーのポイントは、「双方向性」です。これはコミュニティーがどこまで大きくなっても同じです。100〜1000人規模を超えて、1万人、10万人、100万人というさらなる大規模コミュニティーを築く場合においても、原則一方通行ながら、どこかで双方向性を感じさせる仕掛けを入れ込む必要があります。

コミュニティーリーダー自身との双方向性を感じさせたいのであれば、リーダーが当該コミュニティーにおける投稿に最低限のリアクションをすることがまず重要ですし、あるいは一方通行ながら、「このメッセージは私に向けて言ってくれているんだ」という錯覚を聴衆の中に起こさせることでも、擬似的な双方向性を演出できます。また、あまりにコミュニティー規模が大きくなってきてリーダーとファンの間の双方向性が成立しなくなってきた場合においては、今度は「ファン同士の双方向性」によって、コミュニティーのエンゲージメントを保つこともできます。

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