ホームレスの「儲けすぎはご法度」な稼ぎ事情 空き缶や古雑誌を売ってどれほど儲かるのか

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大阪では、ホームレスが露店を開くことが多い。ドヤ街西成に行くと、路上にズラーッと商品を並べて売っている人がたくさんいた。

さまざまな物を売っている露店(筆者撮影)

大阪以外のホームレスで露店をしているのはほとんど見たことがない。やはり、大阪は商人の街ということなのだろう。

実にさまざまな物を売っていた。

家具、靴、ライター、リモコン、充電器、カラオケ、電気工具、睡眠薬……など。たくさん売っているが、欲しいものはなかなか見つからない。でも、何を売っているのか見て回るのは、とても楽しかった。

ホームレスではないが、廃棄されたお弁当やおにぎり、パンなどを安い値段で売っている露店もあった。海外から買ってきたタバコ(税金の関係で日本より安く買える国で買ってきて、少し安く売る)を売っているおばちゃんたちもいた。

最近では警察の取り締まりが厳しくなり、露店はほとんど営業できなくなった。少し寂しいけれど仕方がないことなのだろう。

ホームレスの労働はきつい、汚い、危険

珍しい稼ぎ方では上野公園でのギンナン集めがあった。上野公園はイチョウの樹がたくさん植わっているので、秋にはギンナンがたくさん落ちる。これを拾って、周りの実を剥いで乾かし食材にして売るのだ。

ご存じの通り、ギンナンはとても強い臭いを放つ。またかぶれることもある。当時は秋になると、上野公園のテント村のあたり一帯にギンナンの臭いが充満して、歩いているとくらくらすることもあった。

ギンナンを袋に入れて販売すると、これが売れた。通行人は一袋500円でバンバン買っていった。

「上野の料亭の人も買いにくるよ。まとめてかなりたくさん買ってくれるから、数万円の売り上げになるよ」

とホクホクした顔で話してくれたおじいさんもいた。ただ前にも言ったとおり、儲かってしまってはダメなのだ。すぐに暴力団の仕切りになってしまった。

しばらく後に顔を出すと、

「全然儲からなくなっちゃった」

とおじいさんは寂しい顔で言っていた。

ホームレスになってもお金は必要だ。

もちろん家で生活するよりも支出は少なくて済むが、その代わり稼げる額も極端に少なくなる。そして労働も、きつい、汚い、危険だ。

「ホームレスの仕事はのんびりラクそうだなぁ」

という人は1度、朝から晩まで空き缶を集めてみたらいい。

きっと彼らを、見る目が変わると思う。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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