企業主導型保育所に巣食う「助成金詐欺」の闇 政府肝いりの保育園増加策には大穴があった

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A社が運営するある保育園の見積書と助成決定通知書(編集部撮影)

問題は、工事費用の9873万円の妥当性だ。この費用はマンション1室の購入費用ではない(月額賃料64万8000円の賃借契約)。保育園開設の整備費である。小さな保育園の整備費としては、素人目にも違和感がある金額だ。たとえば、内装仕上げ工事だけで1687万円、空調設備工事だけで951万円と見積もられているのだ。

この見積もり資料を別の企業主導型保育所を運営する経営者に確認してもらった。この経営者は東京都内で複数運営し、待機児童対策に貢献しているとして自治体からの信頼も厚い。経営者は資料を見ると、目を剥くような表情を浮かべて言った。

「この金額はあり得ない。私が経営している保育園(約100平方メートル)の見積もりと比較して内装仕上げ工事費は8倍、空調設備工事は4倍もします。そのほかの工事費も数倍高い」

見積もり額9873万円は「あり得ない」

内装工事費用の単価は、「坪あたり」で計算されるのが一般的だ。見積もり額9873万円を工事面積36坪で割ると、坪単価は274万円に上った。この金額に対し、保育園の設計を手がけたことがある一級建築士が驚きの声を上げる。

「坪単価274万円なんて絶対にあり得ない! 大理石でも使っていたんですか?」

別の一級建築士によると、保育園の工事費用は坪単価100万円前後が相場だという。この建築士は「工事費用の坪単価が80万円台の保育園もある。なぜ審査の段階で見抜けなかったのか」と疑問を呈した。

ほかの建設関係者もこう話す。

「保育園に用途が近い"学校"の鉄筋コンクリート造でも、坪単価100万円が標準的です。内装工事費の坪単価274万円は、新築で2~3園を建てられる金額に相当する」

児童育成協会関係者は次のように反省する。

「整備費は平米単価を決めるべきだったと思っています。2018年度に入るまではそれがなかった。だから、助成金を青天井で出してしまっていた。結果的に協会の審査に問題があったといわれてもやむを得ない。今後は是正していきたい」

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