奔流中国21 新世紀大国の素顔 朝日新聞社著 ~中国の素顔が見える 内面深く掘り下げた力作

奔流中国21 新世紀大国の素顔 朝日新聞社著 ~中国の素顔が見える 内面深く掘り下げた力作

評者 バリデックス代表取締役社長 増田英樹

2001年にオリンピック開催が北京に決まったとき、誰が今日の中国を予想したであろうか。その実力を世界に示す絶好機が悪夢に変わったのである。

祭典の花形である聖火リレーは、中国から派遣された公安に守られて世界の都市を走る。チベット問題では、触れられたくない人権と民主化の問題が世界の目にさらされ、四川地震では校舎の手抜き工事の汚職問題や、餃子の毒物混入問題が顕在化し、中国政府の思惑とはまったく逆になった。世界は、国威高揚どころか中国の現実を見せつけられたのであった。

中国では、市場経済の侵食で共産党が得意とするマクロコントロールの均衡が崩れ、さまざまな矛盾が顕在化してきている。市場経済は独り歩きしだし、所得格差は社会不安を生み出す。共産党がなんとか押さえていた国民の不満は高まり、地下にたまった「マグマ」がいまや地表に達し、いろいろな形で噴出し始めているのである。

本書は、顕在化した「マグマ」を30名を超える記者が丹念に取材し、具体事例をもって紹介している。その現象を繋ぎ合わせると、現在の中国の素顔が見えてくる。中国が直面している課題をほぼ網羅して、さまざまな角度から内面深く掘り下げた力作である。しかし、読者はそこから「その後の中国」の姿が見えてきたであろうか。

北京オリンピックは、現代中国にとって社会経済のシステム変化のターニングポイントであった。本書は最終章「膨張とあつれき」で中国の海外との関わりと戦略について触れている。グローバル化とは国境をまたいで血管も神経も繋がることである。中国社会主義市場経済と民主化はこのグローバル化の波にさらされてどのように変貌を遂げてゆくのか、もう一歩踏み込んでほしかった。

朝日新聞出版 1680円  316ページ

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