「トヨタ×ソフトバンク」を解く基本中の基本 モビリティに紐付くサービス事業化のキモ

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バックヤードには勤怠管理なども含むほかの機能があるが、システムの仕事はまだまだシンプルで、運転もドライバーが行う。カーシェアリングやライドシェアリングは、基本的に限られた情報だけで顧客のニーズを把握できるMaaSの中では比較的ハードルが低い事業なのだ。

しかし、これが移動型の小売り店舗だったらどうだろう? スペースは限られているので、顧客の求める商品を予測して用意しなくてはならない。仮に服や靴だったりしたらサイズの把握も必要だ。しかも現実的なそれはメーカーごとに少しずつ異なる。あるいは飲食ともなれば顧客の嗜好や予算の把握だけでなく、食材や厨房設備やレシピ情報など多岐にわたった設備と情報が必要で、かつ、アレルギーなどのクリティカルな情報も必須だ。

つまり来るべき本格的なMaaSの時代を考えれば、その複雑さは、現状のUberと比べるべくもない。それはもう万人に対してパーソナルカスタマイズされたコンシェルジュサービスで、極めて複雑怪奇なものになる。しかも業種は多岐に及ぶ。ライドシェア、カーシェア、レンタカー、タクシー、小売り、宿泊、飲食、物流、イベント。それらの一つひとつはどれも専門企業が勝ち残るためにしのぎを削る狭き門であり、その全ジャンルで勝ち残れるサービスを構築するのは世界の巨人、トヨタといえど簡単なわけがない。しかしそれにチャレンジするのがMaaSなのだ。

車両制御インターフェースの開示による自動運転の仕組み(図:トヨタ自動車)

MaaSが本領を発揮したときには「人ができることを機械に置き換えるのではなく、これまで人間にも不可能だったきめ細かいサービスをシステムが行う」世界がやってくる。

人間にも不可能だったきめ細かいサービスの実現のため

そういうビジネスのプラットフォームとしてe-Paletteをみたとき、どんな情報をどう組み合わせればどういうビジネスができるかを徹底的に洗い出していかなくてはならない。砂つぶを積み上げていくつもの富士山を作るような計画である。

e-Palette Conceptを活用したMaaSビジネスにおけるMSPF(図:トヨタ自動車)

その役割を担うのはAI(人工知能)である。万人に対してカスタマイズされたコンシェルジュサービスを作るとすれば、個人とひも付いたビッグデータをAIで分析するしかない。

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