トヨタ1兆円下方修正の深層、北米拡大が招いた誤算

トヨタ1兆円下方修正の深層、北米拡大が招いた誤算

衝撃的な内容だった。トヨタ自動車が11月6日に実施した決算説明会は、記者団が言葉をのみ込む異様な光景となった。

発表された2009年3月期の営業利益予想は6000億円。期初予想から1兆円も下方修正した。前期比では1兆6700億円減で約7割もの減益。しかも下期の営業利益はたったの180億円の見通し。単独決算だと下期は約1100億円の赤字となる。「日を追うごとに状況が悪くなっている」と語る木下光男副社長の表情は険しかった。減益要因の多くは円高と販売減にあるが、いずれもサブプライム不況の震源地である北米市場が絡む。

通期の世界販売計画は前期比67万台減の824万台だが、約8割が北米の減少分だ。10月も米国の販売実績は6カ月連続の前年割れ。減産に入ったライトトラックばかりでなく、稼ぎ頭の「カムリ」も1割減と、乗用車の雲行きも怪しくなってきた。在庫日数は64日と、1月の40日から比べて膨れ上がっている(オートモーティブ・ニュース調べ)。

北米部門は7~9月期に約350億円の営業赤字へと転落。店頭の在庫を減らすため、8月からピックアップトラック生産のテキサスなど、3工場を一時休止した。11月13日に一応稼働したが、「従来の2直でなく1直体制」(幹部)と、フル生産には遠い。

本業の不振に加え、金融事業の低迷も痛い。特に米国では雇用悪化で自動車ローンを返せない消費者が増え、中古車価格下落で転売するリース車両も評価損を抱えている。貸倒率は前期の0・7%から、今上期に1%へ悪化。ローンの貸倒損失は500億円、リースの残価損失も250億円と、計750億円もの損失を計上した。一方、ホンダはローンとリースで490億円、日産自動車はリースで627億円の損失を積んでいる。金融不安が長引けば、さらなる追加引き当てが迫られかねない。

波及はグループ会社にも

日本メーカーの頂点に立つトヨタの“変調”は当然、周辺にも大きく波及する。

来夏に高級車「レクサス」のハイブリッド専用車を組み立てる計画のトヨタ自動車九州は、今期の生産を約3割減らし、100億円以上の営業赤字となる見込みだ。北米向け輸出への依存がここにきて致命傷となった。

部品会社の悲鳴も大きい。トランスミッション(変速機)で大型車向けが多いアイシン精機は、北米部門で通期34億円の営業赤字を見込む。「トヨタなど得意先の大幅な生産調整が顕著」(山内康仁社長)。豊田自動織機も北米は上期6億円の赤字だった。デンソーも北中南米の通期営業利益を前期比46%減と見込み、全体の設備投資を期初比120億円削る。

トヨタによる生産体制再編の影響は今後も続く。10年後半に稼働するトヨタのミシシッピ工場では、車種をSUVの「ハイランダー」からハイブリッド車「プリウス」へ急きょ変更。それに応じ、トヨタ車体やトヨタ紡織の部品工場も、生産品目の変更に迫られている。テキサス工場ではトヨタに合わせ、同じ敷地内にある豊田合成の専用工場が生産ラインを停止していた。グループは一蓮托生である。

逆回転し始めた歯車は、もう戻らないのか。ある大手自動車メーカー幹部は好況に沸いた時期の北米事情を振り返って、こう語る。

「1990年代、ライトトラックのブームをフォード・モーターらが仕掛け、その後を日本勢も追った。フルラインナップ戦略のトヨタグループが、積極的にリスクをとりにいったのは当然だった」

従来トヨタは、北米部門に年3000億円規模の設備投資をし、現地生産を拡大。一方で毎期1兆~2兆円の営業利益を稼ぎ、円安メリットも合わせて、その過半を北米が占めてきた。だが今や、市場は「来年いっぱい厳しい」(渡辺捷昭社長)状況へと一変、拡大路線は裏目に出た。不振は欧州や新興国へも波及し、当面やむ気配はない。暴風雨のさなか、トヨタの実力があらためて問われている。

(撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済)

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