秋競馬、「アーモンドアイ」は牝馬3冠なるか 来週10月14日のGⅠ秋華賞が決戦の時

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ノーザンファーム天栄でのアーモンドアイ(8月23日)(筆者撮影)

しかし、今回はノーザンファーム天栄に預けている。現在、国枝厩舎の多くの馬はレースを終えるとノーザンファーム天栄に放牧して調整され、レース前に厩舎に戻ってくる。

国枝調教師は「その時のベストの選択をしているだけ。今はこれがいいと思っている」と言う。かつては美浦と栗東の調教施設の格差を指摘し改善を要求してきた。自分の手で仕上げたいという気持ちも強かった。

ところが、今は違う。「結果を出さなければならない立場。意固地になっても仕方ないからね。ノーザンファーム天栄はスタッフのモチベーションも素晴らしいし施設も充実している」という。昨年の改修でノーザンファーム天栄の坂路は長さも勾配も栗東の坂路と同等のものになった。

国枝調教師は「成績も挙げている。経験値も違う。口を差しはさむ余地はない」と全幅の信頼を寄せる。アーモンドアイは9月12日に美浦トレセンに戻ってきた。10月14日の秋華賞まで約1カ月。「とにかく無事に送り出すことだけ」と話していた木實谷場長はほっとした表情を見せた。

美浦の坂路で時計を出し始めている。ここまで順調に来ている。運も向いてきた。オークスが激戦だったことを証明するようにオークス2着のリリーノーブル(栗東・藤岡健一厩舎)、4着のレッドサクヤ(栗東・藤原英昭厩舎)が戦線を離脱。

昨年の阪神JF勝ち馬で桜花賞2着、オークス3着のラッキーライラック(栗東・松永幹夫厩舎)も予定していたローズSを使えずにぶっつけ本番になった。トライアルのローズSを勝ったカンタービレ(栗東・中竹和也厩舎)、紫苑Sを勝ったノームコア(美浦・萩原清厩舎)はいずれのルメール騎手が騎乗した。ルメール騎手がライバルの力を熟知した上で秋華賞ではアーモンドアイとコンビを組む。ここに来てノームコアも秋華賞を回避。アーモンドアイ陣営にとってさらに追い風が吹く。秋華賞を戦う上でこれほど心強いことはない。

アーモンドアイはもっと良くなる

国枝調教師と木實谷場長が意識しているのはジェンティルドンナの存在だ。3冠牝馬でもありJRA最多タイのGⅠ通算7勝を挙げて顕彰馬にも選ばれた。アーモンドアイは秋華賞の結果次第でジャパンC(11月25日・東京、2400m芝)へ向かう予定だ。ジェンティルドンナが3歳時に記録したGⅠ4勝を狙う。

「アーモンドアイは奥手。もっと良くなる。ジェンティルドンナを超えるためには成長していかないと無理」と国枝調教師。3冠の先には牡馬、古馬との戦いが待っている。その先には海外のビッグレースもある。史上5頭目の牝馬3冠も通過点。そんなムードすら漂うアーモンドアイの挑戦を楽しみに見守りたい。

高橋 利明 福島民報 記者

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たかはし としあき / Toshiaki Takahashi

1965年生まれ。子どもの頃から地元の福島競馬場に通う。1989年に成蹊大学卒業。入社2年目の1990年に念願の福島民報社競馬担当記者へ。1993年から本紙予想を担当。福島テレビ、ラジオ福島の競馬中継にも出演。永遠のアイドルホースはハイセイコー。競馬の現場記者であり続けることが目標。
 

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