景気急減速で状況一変! 就職戦線大予測2010

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【4.採用形態】 採用対象者の拡大 理工系は高学歴化進む

採用対象者は、大学卒業予定者だけでなく、既卒者(第2新卒)、中退者に拡大。外国大学や外国人留学生からも採用するようになった。雇用形態も終身雇用型の正社員だけでなく、有期契約型や勤務地限定の新卒も大量に採用するようになった。また初任給に差があったり、年俸型の採用形態が現れたほか、入社時期が秋や一年遅れといった新卒採用も見られるようになった。この傾向は、採用のフレックス化といわれ、急速に浸透している。新卒の一括・一律・一斉採用という日本的な新卒採用システムは崩壊してきている。

特に採用における海外留学生に対するアプローチは活発で、多くの企業がボストン、ロンドンなどで開催される就職フォーラムに参加している。一方、国内で学ぶ外国人留学生を採用しようという企業も多い。企業の外国人留学生の採用方針について、「積極採用」「採用」企業は47%に達し、逆に「採用しない」企業は4%にすぎない。企業の試みにも注目するものがある。三菱重工業、住友重機械工業などが、積極的に外国人新卒採用をして話題になったが、帝人やIHIのように中国や韓国に出向いての採用も注目される。



 採用形態の変化で採用方法も変わってきた。理工系採用の自由応募、高学歴化である。理工系の採用では、伝統的な学校推薦、研究室ルートが崩壊。教授の裁量による就職指導から、学生の自由意思による就職選択が主流となっている。企業と大学の繋がりが希薄化してきたともいえるが、採用活動の早期化、金融、情報産業など新分野への進出という面もある。


同時に大手企業の研究開発・技術職採用で、半数以上を大学院修了者が占めるようになったことも見落とせない。大学院生のみを採用する企業もあり、理工系学部卒の学力低下だけでなく、企業の技術水準が高度化していることを物語る。


【5.採用手法】 企業個性を強調する採用方式が普及

本来は、採用とは関係の薄いインターンシップだが、採用活動の一環として、早期からの学生との接触を目的とする側面が強くなっている。4週間以上の本格的な就業体験を目的とするものから、2週間、1週間などさまざまなタイプがある。インターンシップから採用内定へとストレートなものも一部にある。しかし、最近流行の1dayインターンシップは、内容面では就業体験というより会社説明会の色合いが濃く、募集人員が数百名という例も多い。事実上の早期会社説明会といえる。

一方、課題解決型のインターンシップやワークショップもある。単なる就業体験ではなく、企業の若手社員と学生たちが共同して実践的課題に対して議論し、成果を競うというもの。問題解決が容易でないテーマが設定され、実際の仕事への取り組み態度や能力レベル、対人関係、ストレス耐性も観察できる。採用直結型のインターンシップというより、いわゆるジョブ採用だ。コンサルテイング会社をはじめ、金融関係や大手メーカーで今年から早期における選考手法として普及しそうである。

本格的なインターンシップでは、海外型も登場した。三菱東京UFJ銀行は4泊6日の日程で、ロサンゼルス、香港など海外支店で就業体験できるようにした。採用PRとしてグローバル・バンキング・ビジネスをアピールする狙いもあるようだ。

また最近の採用方式として、コラボ型の説明会が増えてきた。業界単位あるいは業界代表型で行われてきた合同説明会に対して、参加企業がお互いに共通するキーワードの下に特徴や魅力を前面に打ち出したものである。例として、セブン‐イレブン・ジャパン、大同生命保険など7社が参加した「ポーター賞受賞企業」による合同会社説明会がある。

採用手法の変化では、グループ採用の増加ぶりも見落とせない。知名度の低い関連会社は独自に学生を集められないため、中核企業が中心になり合同説明会を開催している。大規模な例としては、JTBのグループ採用で、29社合同で行っている。

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