台湾の鴻海が「脱アップル」を進める理由 米アップルから消費者志向にシフト

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11月13日、台湾の鴻海精密工業は消費者志向の事業へとシフトしているが、この決定は利益率の改善につながるとみられている。写真は郭台銘(テリー・ゴウ)会長。6月撮影(2013年 ロイター)

[台北 13日 ロイター] -台湾の鴻海精密工業<2317.TW>は、主要顧客の米アップルと価値の低い電子機器受託製造事業からシフトすることを決めたが、この決定は利益率の改善や、労働コスト上昇の影響相殺につながるとみられている。

鴻海は消費者志向の事業へとシフトを図るなか、電子機器からアプリ、クラウドコンピューティングまで幅広い総合サービスを提供しつつある。

ただ同社は依然として売上高の40─50%をアップルのスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」やタブレット端末「iPad(アイパッド)」の組み立てから得ているとみられる。比率は1年前の60%からはやや低下している。

戦略的シフトはまだ始まったばかりだが、アナリストはこの動きが今年の鴻海の利益率押し上げにつながるほか、より長期的には中国工場における賃金・コスト上昇の影響を相殺するとみている。

大和証券(台北)のアナリスト、Kylie Huang氏は、第3、第4・四半期の鴻海の利益率に寄与するだろうと指摘。

さらに「レバレッジ効果がある。長期的には、通信事業者とより緊密な関係を築くことが、鴻海にとってテレビやタブレット端末、ゲーム機、スマートフォンを提供する際に消費者のニーズを理解する助けとなる」と述べ、同社が最近取得した第4世代(4G)通信事業免許に言及した。

鴻海は13日、第3・四半期決算を発表する。アナリスト予想によると、営業利益率は第2・四半期の2.1%から3.21%に上昇する見通し。2012年第3・四半期の営業利益率は3.4%だった。

純利益も259億9000万台湾ドル(8億8340万米ドル)と、第2・四半期の169億8000万台湾ドルから増加するとみられている。米マイクロソフトの「Xbox」やソニー<6758.T>の「プレイステーション(PS)」の新製品組み立て事業の売り上げ増が寄与する見込み。

ただ純利益は、主にアップルからの注文が一時的に落ち込んだことから、前年同期の303億6000万台湾ドルは下回る見通し。

鴻海は今年に入って、中国でインターネット対応大型テレビの販売に向け、動画配信サイト運営の楽視網(LeTV)と提携している。米国でもテレビの現地製造に向け工場を建設する計画。

6月には、米非営利団体のモジラ財団と提携し、同財団開発の基本ソフト(OS)「ファイアフォックス」を搭載したスマートフォンやタブレットなどの商品を手掛けると発表した。また最近では3億1100万米ドルを投じ、台湾で4G通信事業免許を取得した。

収益源の多様化に向け、アジアの顧客への働き掛けも行っており、アナリストは、事業拡大に向けた取り組みに寄与するとみている。

ゴールドマン・サックスのアナリスト、Liang-chunLin氏はリポートで「鴻海は積極的に問題に対処している。バリューチェーンの押し上げを目指し、中国の携帯電話機メーカーとの提携関係構築や、技術やチャネルビジネスへの投資に取り組んでいる」との見方を示した。

(Clare Jim記者 翻訳:佐藤久仁子 編集:田中志保)

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