26歳で3度もスベった起業家が諦めないワケ 起業家に必要なのはアイデアか姿勢か

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ベンチャー事業にかかわったことがある人であれば知っていると思うが、資金を調達するうえで重要なのは「誰を知っているか」だ。現在の東京であれば、きちんとした人脈を持っていれば、5000万円程度までのシードマネーを調達することは可能だと小林氏はアドバイスした。伝えられるところによると、小林氏はアイドリンに「日本語が話せてシリコンバレーから来たとなれば、それはクールとみなされる」とも伝えたという。

突然、違うアイデアを思いついた

世界的に見れば、けっして盛んとは言えないが、それでも日本の起業環境は改善しており、エコシステムも膨らんでいる。たとえば、2014年以前は日本に起業家を支援するような大きなイベントはなかったが、シンガポールの「テックインアジア」が東京で始まってからは、孫泰蔵氏の呼びかけでフィンランドの「スラッシュ」が東京でさらに大規模なイベントを開くなど環境は激変した。

インキュベーターや投資家、コワーキングスペースなどもどんどん増加。「日本の起業家を囲むエコシステムは大きくなっている」アイドリンは言う。起業家の数も増えており、「(ベンチャー企業の)評価額も過去にないほど高くなっている」。

サンフランシスコ滞在中、小林氏はアイドリンをサンフランシスコに住むほかの日本の起業家たちにも引き合わせた。こうした起業家たちはアイドリンに日本のシード投資家を紹介してくれたという。そのおかげで、東京に戻ってから数日間で40件に上る投資家とのミーティングを行うことになった。が、残念ながら彼のアイデアに出資したいと申し出る投資家はいなかった。

翌日、また別の投資家にキュッツイーのプレゼンをしている最中、アイドリンは突然こう言った。「ちょっと変だと思うもしれませんが……このアイデアは昨日思いついたばかりなんです。ちょっと聞いてもらえませんか」。そして、アイドリンはプレゼンとはまったく関係ない事業案について話し始めた。すると投資家はこう言った。「この新しいアイデアのほうであれば、投資しますよ!」

このアイデア、PeraPera(ペラペラ)は、特定の記事の翻訳費用を同じような関心を持つ人たちで折半しようというものだ。アイドリンがこのアイデアを思いついたのは、シェアオフィスで日本のあるテクノロジーニュースのサイトを閲覧しているときだった。漢字交じりの記事やサイトを読むのは、たとえバイリンガルのアイドリンにとっても容易なことではない。グーグル翻訳を使うこともあったが、翻訳のクオリティが高いとは言えなかった。

シェアオフィスで近くに座る起業家たちに、外国語のサイトをどうやって読んでいるのか聞いてみたところ、彼らはGengo(ゲンゴ)のような質の高い翻訳をしてくれるサービスを使ってみてはどうか、と提案してくれた。しかし、アイドリンにとってゲンゴは高かったし、訳に時間もかかりすぎた。

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