大企業の「化石並み情報システム」に潜む爆弾 レガシーシステムは「2025年の崖」で崩壊する

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第二に、システムの刷新は難しく、開発費用の大幅な超過や納期の遅延、あるいはやり直しといったリスクがつきものである。ユーザ企業とベンダー企業との間でトラブルが生じ、場合によっては訴訟に発展することもある。こうしたことを考えると、経営者が、システムの刷新に二の足を踏む気持ちはよく分かる。

第三に、システムの刷新は、業務の大幅な変革を伴う。したがって、情報システム部門のみならず、事業部門の現場をも納得させ、企業全体の変革を実現できる強いリーダーシップがなければならない。それができる経営者は限られよう。

公益的事業体のシステム刷新は一般企業以上に困難

このレガシー・システムの刷新を困難にする3つの問題は、国や地方自治体、あるいは公益的な事業(金融、交通、エネルギーなど)を行う大企業にとっては、特に深刻となる。

第一に、こうした公益的な主体は、数多くの重要な情報を扱っているため、その情報システムは巨大かつ堅牢なものとなる場合が多い。ゆえに、その刷新の費用もまた、巨額となりがちである。

第二に、システム刷新の失敗リスクについても、公益的な主体の場合には、その失敗は社会全般に及ぶ可能性がある。このため、公益的な主体は、システム刷新にいっそう慎重にならざるを得ない。

第三に、システムの刷新は業務の変革を伴う。しかし、公益的な主体の業務は、法規制によって厳しく規律されており、柔軟に変更することは難しい。

こうしたことから、公益的な主体のシステムの刷新は、一般的な企業以上に困難なものとなる。言い換えれば、レガシー・システムの問題は、公益的な主体において、より深刻化しやすいということである。

これに対して、レガシー・システムが残存しているのは、日本のベンダー企業がより優れたシステムを提供できないせいだとする声がある。そうした側面もあることは否定しない。

しかし、仮に日本のベンダー企業がより優れたシステムを提案したとしても、ユーザ企業が巨額の費用、失敗のリスク、業務変革を覚悟しなければ、システム刷新はできないのである。実際、外資系ベンダー企業がクラウドベースの優れたサービスを提案しているが、それだけでレガシー・システムの解消が進むというわけではない。

要するに、ベンダー企業のせいにしていても、問題の解決にはならないということだ。

いずれにしても、企業にとって、レガシー・システムの刷新とは、容易ならざる大事業である。しかし、「報告書」は、レガシー・システムの解消が進まなかった場合には、2025年頃に深刻な事態がもたらされるであろうという警鐘を鳴らしている。

それは、「2025年の崖」と呼ばれる危機である。

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