遅延に混雑…首都圏「残念な直通ルート」10選 便利になるはずが、どうしてこうなった?

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8)JR上野東京ライン(東海道本線―宇都宮・高崎・常磐線、東京駅・上野駅経由の直通ルート)

2015年3月開業のルートで、それまで上野駅が起点だった宇都宮・高崎・常磐線の電車と東京駅が起点だった東海道本線の電車が直通運転を行うようになった。これにより、たとえば宇都宮・高崎・常磐線沿線に住んでいる人が東京駅や新橋駅周辺に通勤する場合、上野駅で乗り換えることなしにダイレクトで勤務地に行けるようになったメリットがある。

上野東京ラインの開業で乗り換えの手間が減った一方、「座れなくなった」との声も(T2 / PIXTA)

並走する山手線、京浜東北線の車内も多少混雑が緩和されたようでもある。さらに、常磐線特急が東京駅を経由して品川駅まで行くようになったため、上野駅始発の頃に比べて便利になったと言える。

けれども、便利になれば乗客は増え、常時車内は混雑している。にもかかわらず、昼間は15両編成ではなく10両編成のこともあり、混雑に拍車をかけている。また、帰宅時に東京駅や上野駅から電車を1、2本待てば確実に座れたであろう通勤客にとっては、中間駅となったことは残念な結果でしかない。わずかに始発電車があるものの、本数はごくわずかだ。

湘南ライナーは東京駅始発で残っているけれど、途中停車駅は限られるし、別途ライナー料金がかかる。グリーン車は、グリーン料金がかかるうえに、東海道本線は、グリーン車利用客が多く、確実に座れる保証はない。上野東京ライン開業を疎ましく思っている人は少なくなく、その人たちにとっては「残念な直通運転」なのだ。

9)JR湘南新宿ライン(東海道本線―高崎線、横須賀線―宇都宮線、渋谷駅・新宿駅・池袋駅経由の直通ルート)

2001年12月運転開始と、すでに20年近い歴史があり、すっかり定着した感がある。それまで、必ず乗り換えが必要だった新宿から横浜方面へダイレクトに行けるようになったメリットは計り知れない。

しかし、便利になったことで利用者が増え、常時混みあい、グリーン車も満席に近い状況が続いている。決して快適とは言えないのは悲しむべきか喜ぶべきか。そのうえ、長距離直通運転のデメリットである列車ダイヤの乱れも少なからず発生する。できれば利用したくないルートだと思っている人もいるのではないだろうか?

線路はつながっているのに…

10)りんかい線、JR京葉線

りんかい線は大崎駅で埼京線と接続し、直通電車が川越駅から新木場駅まで運転されている。新木場駅では京葉線と接続し、実は線路がつながっている。まれにイベント列車が通り抜けることもあるのだ。

しかし、りんかい線と京葉線は直通運転を始める気配がない。メリットはあるのに、運賃計算をどうするのか、埼京線からそのまま直通で舞浜方面へ向かう場合、りんかい線区間の運賃を徴収できなくなるといった鉄道会社側の事情が壁となっているのだ。

りんかい線は運賃も高く、そのあたりも問題視されている。もともとは国鉄時代に貨物線として計画された路線なので、いっそのことJRが買収しても不自然ではないのだが、簡単にはいかない事情も見え隠れしている。何とかならないものだろうか?

以上、首都圏の直通ルートに関して、陰の部分を取り上げてみた。利用者にとってハッピーとなるような改善を期待したいものだ。

野田 隆 日本旅行作家協会理事

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のだ たかし / Takashi Noda

1952年名古屋市生まれ。早稲田大学大学院修了(国際法)。都立高校に勤務のかたわら、ヨーロッパや日本の鉄道旅行を中心とした著作を発表、2010年に退職後は、フリーとして活動。日本旅行作家協会理事。おもな著書に『にっぽん鉄道100景』『テツはこんな旅をしている』『シニア鉄道旅のすすめ』(以上、平凡社新書)、『テツ道のすゝめ』(中日新聞社)、『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』(光文社知恵の森文庫)、『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』(ポプラ新書)などがある。

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