武者氏「米中貿易戦争はアメリカ完勝になる」 いずれ日米の株価は「もう一段の上昇」へ

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たとえば、アメリカの2017年の対中貿易赤字は3750億ドルで、アメリカの貿易赤字全体の約半分を占めます。また、アメリカの対中経常赤字は、この10年間、GDP比で2%にもなります。アメリカ全体の経常赤字は、GDP比で2.4%なので、ほとんどの赤字は対中国によるものであるのがわかります。

中国はアメリカに譲歩せざるを得ない

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アメリカは今後、GDP比で2%を占める対中経常赤字を1.5%、あるいは1.0%に引き下げる手段を講じてくるでしょう。

そして、中国はアメリカに譲歩せざるをえません。なぜなら、米中貿易において、中国は圧倒的に受益者だからです。

もし、アメリカが中国との貿易を完全に途絶すれば、先に白旗を上げるのは中国です。中国は、アメリカから得ている利益を失わないようにするためにも、アメリカが提示してくる要求をのまざるをえないのです。実際メンツを維持しつつも、習近平政権の対米姿勢は、著しく融和的です。

そればかりか中国では、アメリカを本当に怒らせた習近平政権の失政に対する批判が高まっているといわれています。

また米中貿易摩擦の結果予想されるダメージを緩和するために、財政拡大、金融緩和などの景気テコ入れ策が策定されています。このように考えると、米中貿易戦争は当面の世界経済にも株式市場にとっても、マイナス要因ではないことが明らかです。市場がこれに気づいた時、株価の重石がなくなり、日米ともに株価はもう一段高を目指すことになるでしょう。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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