"売れすぎ"が問題に、スバルのぜいたくな悩み 米国での販売台数は5年連続で過去最高の見込み

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富士重は米国の生産子会社、スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ(SIA)の年間生産能力を14年夏に現在の27万台から30万台、16年末に40万台に増強する投資計画を公表済み。さらに群馬製作所の本工場を14年夏に現在の18万台から20万台に増強する計画を発表した。

同社が「チョコット能増(能力増強)」と表現するように、需要に応じて少しずつ生産対応を進めるのがスバル流だ。

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「XVハイブリッド車」と吉永社長(撮影:鈴木紳平)

吉永社長は「たとえば新たに工場を建設して生産能力を20万台に増やしたとしても、今の販売の好循環を守れるか。ちょっと足りないくらいがちょうど良い」と話す一方で、「米国のディーラーからは全然足りない、と言われていますが…」と明かす。

さらに、今年夏に日本で投入した「XVハイブリッド」を米国でも発売する予定だ。「ハイブリッドも生産能力を倍にしているが、米国で発売するとまた足りなくなる。正直怖い部分もある」(吉永社長)。

トヨタからの受託生産は「続けたい」

実は、SIAの年間生産能力27万台のうち、スバル車の生産能力は17万台。残りの10万台は筆頭株主であるトヨタ自動車の主力車種「カムリ」の受託生産だ。もともとは、米国での生産が落ち込んだ07年にトヨタから救済を受ける形で始まった。だが、スバル車の生産能力が逼迫しているだけに、一部報道ではトヨタからの受託生産を取りやめ、スバル車の生産に振り向ける方向で協議に入ると取りざたされている。

これに関し吉永社長は「当社からやめたいという要望はまったくない。今まで通りやらせていただきたい。ただトヨタ側で計画があるのであれば、そのときはきちんと検討せざるを得ない」と話す。

富士重は米国でのシェアが2%強のニッチプレイヤー。巨大の投資をして生産能力を急拡大するのはリスクが高い。一方で、現在のような品薄状態では機会損失につながってしまう。富士重にとってうれしい悩みではあるが、難しい舵取りが続く。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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