キリンのマーケティングが変貌を遂げたワケ 上期の販売が好調、独り負けを返上できるか

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ビールに関しては門外漢の山形氏だったが、刷新前と大きく変えたことの1つに、「コク」や「キレ」など味を表現する言葉を意図的にマーケティングから排除したことがある。社内会議や資料でも、そうした表現はすべて廃止させた。強調したのは、「おいしい」だけだった。

「社内からも、『漠然とおいしいしとか言っていないで、それが具体的に何かを規定してほしい』ということはよく言われる。だがあえてしていない。一昔前まではマスマーケティングで何か1つのブームを作り出せたが、価値観が多様化している今は1つの価値観で多くの量を売ることは難しい。むしろ、お客さんなりの感想をそれぞれ引き出していく方向にシフトした」(山形氏)

P&G時代から、ビールメーカーがコク、キレなどの“味言葉”を使って1つの価値観を訴求していることには違和感を覚えていたという。

CMで伝えるのはいろいろな「おいしさ」

CMも大きく変えた。アイドルグループの嵐を2014年から起用し続けてきたが、それを変更。「嵐には5人のメンバーがいるが、イメージは嵐としての1つだけ。できればいろいろな人がいろいろなおいしさを感じていることを訴求したかった。理想をいえば、1000人のタレントさんが一番搾りを飲んでいるようなものがいい」(山形氏)。

新しいCMでは堤真一さん、満島ひかりさん、鈴木亮平さん、石田ゆり子さんが登場。それぞれの「おいしい」を表現する。

この勢いをいかに続けるか。山形氏は、「嗜好品では、お客さんは自分が選んでいるものを正当化したいと思っている。今いちばん売れているビールだということを効果的にアピールすることで、お客さんにとって一番搾りを“最も安全な選択肢”にしていく」と話す。

一方で、新ジャンル(第三のビール)の立て直しも進む。2017年度は初めてアサヒビールに新ジャンル全体でシェア首位を奪われ、自他共に認める課題カテゴリーだった。

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