池上彰が説く「女系宮家」という選択の現実味 皇位継承を確保するための諸課題

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ただ、これまで議論がなかったわけではありません。たとえば、2005年の小泉内閣の時代に「皇室典範に関する有識者会議」が設置され、安定的で望ましい皇位継承のための方策について検討されました。その報告書では、「今後における皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大することが適当である」とまで書かれています。

この会議が行われた当時は、まだ悠仁さまがお生まれになっていません。つまり、皇太子さまと秋篠宮さま、常陸宮さまの3人だけしか皇位を継承することができない状況でした。ですから、今以上に皇位継承が続くのかということに対して、危機感があったのでしょう。

しかし、報告書が出てからしばらくして、紀子さまのご懐妊がわかりました。2006年9月6日に、男系男子である悠仁さまが誕生されました。そのために、有識者会議の提案を受けた法案の提出も見送られることになったのです。

皇族減少の対策という点が議論されたが

さらに2011年、民主党の野田佳彦内閣の下では、女性宮家の創設が真剣に検討されました。そこでは、女性天皇や女系天皇の容認ではなく、皇族減少の対策という点が議論の中心でした。

両陛下以外の皇族も、さまざまなご公務をなさっています。でも、皇族が減ってしまうと、これまで続けてこられたご公務を取りやめるということにもなってしまいます。そこで、女性宮家を創設して、皇族の減少にブレーキをかけ、安定的に皇室のご公務を続けることができるようにしようというのが、野田内閣の考えていたことでした。

これも法案にはまとまりませんでした。大きな論点として、女性宮家を創設するとしても、その範囲を内親王までにするか、女王までを含むかという議論がありました。また、そのいずれであっても、将来的に宮家は増えていくことになります。その場合の財政的な問題も考えなければなりません。

こうした問題に結論が出ないまま、そのあとを引き継いだ安倍内閣は、女性宮家の創設には反対の立場をとっているので、議論が深まることもなかったのです。

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