早稲田政経学部が数学必修化に踏み切る真意 数学だけではない入試改革の真の狙いとは?

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記述式の問題形式は「大学入学共通テスト」にも入る見込みで、入試改革の大きな流れの1つだ。今回の入試改革でも数学や読解問題を課すことによって、「論理的思考ができる学生が欲しいという早稲田政経からのメッセージを感じた」(Z会エデュースの高畠社長)。今回の動きは入試改革がいよいよ私大まで及び、「論理的思考」重視の流れを決定づけるものといっていい。

こうした中で、学習塾業界の再編・淘汰が加速するという見方もある。「記述式問題に加え、英語民間試験で必要とされるスピーキング力(英会話力)への対応は、受験者だけでなく塾や予備校も対処が大変になる」(大手学習塾幹部)。7月18日には駿台予備学校などを運営する駿河台学園とZ会が業務提携を発表したばかり。「Z会の強みである添削指導は記述式試験の対策指導に適している」(関係者)と言われており、両社の提携は「論理的思考」対策の一環といえそうだ。

10年以上前から始まった「学部改革の一環」

早稲田の政経学部にとっても、今回の改革は単なる受験科目の変更だけを意味しない。10年以上前から始まった「学部改革の一環」(須賀氏)だ。

今回の入試改革をリードした須賀晃一・早稲田大学政治経済学術院長(撮影:今井康一)

政経学部は2004年にもともとあった政治学科と経済学科に加えて、国際政治経済学科という新学科を設置した。グローバルリーダーを養成するという政経学部の目標とともに、「政治学と経済学が車の両輪のようにつながっている『政治経済学』部を象徴する学科」(須賀教授)である。

その両輪である政治学と経済学をつなぐ軸として、数学的方法論や公共哲学を国際政治経済学科のカリキュラムで必修化していった。今後、政経学部の全学科でも必修化が予定されている。入学後に学生がついていけなくなることを防ぐためにも、入試における数学の必須化が必要だった。

今回の入試改革のキモは、単なる数学の必須化だけではない。政経学部を目指す学生、そしてそれをサポートする学校、学習塾は、しっかりとした準備が求められることになりそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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