「若い社員」が次々辞める会社に足りないもの 1カ月や1週間という超短期離職も増加中

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そうした機会を積み重ねていくと、いざ転職が頭をよぎったときに「仕事はキツいけど、あの人たちと一緒にやるのも悪くないな」と気を取り直してくれるかもしれない。人を大切にする、風通しがよい社風は、社員の辞めにくさにつながります。

──一方で、退職を決めた人へのフォローも実は大切だと。

退職願に記された「一身上の都合」の裏を会社は推し量らなければいけない。退職時面談で本音の理由を聞き取るということです。表向きは、ほかにやりたい仕事がある、留学する、家業を継ぐなど、さまざまな補足がつくでしょうが、そのさらに奥、本音の本音では、会社に対するネガティブな感情が渦巻いているかもしれない。そして、その理由は将来の退職者も共通して挙げる可能性が大きい。

強引な引き留めで嫌なストレスを与えるのは最悪

「どうもあの部長のコミュニケーションに問題がありそうだ」「無理な事業展開が、残業や休日出勤など大きな負担を社員に強いている」など。その会社に根深く存在する問題です。それを突き止め改善していくことが、会社として社員の定着・引き留めに欠かせないですね。

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もちろん、本音を引き出すのはなかなか難しい。そのときだけ本人に向き合おうとしてもたぶんダメで、日頃から社員の表情を見ておいたほうがいい。辞める人に会社がどんなフォローをするか、残った社員は組織の対応をじっと見ています。その対応いかんで、モチベーション低下や今後立て続けに社員が辞めていくリスクを抑制することができる。

いちばんやってはいけないのは、強引な引き留めで嫌なストレスを与えてしまうこと。会社の悪い印象だけが残ってSNSに書き込まれ、ブラック企業に真っ逆さま。それがエース級の社員だったりすると、職場に絶望感が走る。「この会社にいていいのか」という不穏な空気が蔓延する。場合によっては、「キミもこっちへ来いよ」と残った社員を巻き込んで負の連鎖が起こる。そうなると完全に後の祭りです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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