「役立たずの受験英語」を劇的に改善する秘策 グローバル時代の英語教育は一つしかない

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それに対してCLILでは、教室における学習時の思考プロセスと、社会における使用時の思考プロセスが一致する。ゆえにグローバル社会で使える英語が育つというわけである。

世界に伍していくレベルの英語習得には時間がかかる。英国のある著名な研究者は、「CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)でC1レベル(英検1級相当)の英語力がないと仕事では使い物にならない。それ以下の達成度では英語を勉強してもムダ」とまで言い切っている。

CLILこそ、グローバル化に対応できる英語教育

その真偽や根拠はともかくとして、英語と言語的に近い言葉を第1言語とするヨーロッパですら、英語の授業だけでは時間数が足りない。そこで、教科を英語で学ばせるという秘策を生み出して、国民全体の英語力向上に努めている。

イタリアに至っては、中等教育の最後の学年で最低1科目は英語で学ばないと高校卒業の資格が得られないように法律が改正された。日本ではそこまではいかないだろう。

とはいえ、世界の英語教育の動向を鑑みると、理論の上でも実績の点でも、おおむねそのような方向に向かうのは必要であり、必然である。

従来の英語教育の上にCLILを加える――。世界と社会のグローバル化に対応する英語教育は、これしかない。

池田 真 上智大学教授

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いけだ まこと / Makoto Ikeda

上智大学文学部英文学科教授、文学部英文学科長。早稲田大学政治経済学部経済学科、上智大学文学部英文学科卒業。上智大学大学院文学研究科英米文学専攻(修士号・博士号)、ロンドン大学キングズカレッジ大学院英語教育・応用言語学専攻(修士号)。上智大学のほか、桐朋学園大学、京都大学大学院、早稲田大学、国際基督教大学で非常勤講師を務める。英語学(特に英文法史)と英語教育(特にCLIL=内容言語統合型学習)を専門とする。日本CLIL教育学会副会長。

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