「就職ナビで採用」の時代はもう去りつつある 逆求人、社員紹介…台頭する新たな採用手法

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もちろん、もっと戦略的に「紹介」を利用する企業もあり、これはリファラル採用と呼ばれている。referralとは紹介・推薦という意味だ。外資系の中には、社内SNSに、社員が友人の情報をあげるシステムを構築している企業もある。IT系の場合、社員の友だちは同レベルのITスキルを持っていることが多いので、効果的な採用手法なのだ。

SNSを使う企業は戦略的にダイレクトソーシングに取り組んでいると評価できる。ただ新卒市場での利用はまだ少ない。転職市場では、「LinkedIn」などの利用が広ってきており、転職希望者が職歴を記入できるようになっている。しかし、職歴を持たない学生が「LinkedIn」に登録することは、少ないかもしれない。

1990年代半ばに登場したインターネットによって、新卒の採用手法は大きな変化を遂げた。就職ナビによる新卒採用が定着し、就職ナビのオープン=新卒の採用活動の解禁日、を意味するようになった。就職ナビ会社は、就活生が企業を探すナビケーション機能を最大化、最適化してきた。こうして2010年を過ぎるあたりまで就職ナビ万能の時代が到来した。

就活ナビだけでは採用が難しくなってきた

1990年代までの企業と学生の出会いは、電話帳のような情報誌とハガキによって行われていたから、掲載社数や配布部数などの数に限りがあった。就職ナビの時代になると制約がなくなったので、人事部だけでは処理できない数のエントリーが集まる。一方の学生も、自己分析とエントリーシート対策、そして企業研究に追われて、負荷が肥大化した。​​​​​​​​​​​​

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いわばダイレクトソーシングは、こうした就職ナビの弊害を”中和”する可能性を持っているように思える。逆求人サイトは10年ほど前から登場しているが、利用する学生と企業が増え始めたのは2015年卒あたりから。売り手市場に転じた時期と重なる。

学生は逆求人サイトの利用に前向きだ。「オファーがよく来るから」「先輩からのススメで使用している」「スマホアプリもあるため、使い勝手が良い」「自分のプロフィールが検索、閲覧された件数がグラフになるので、それを見て自己PRの改善などができる」といった意見が出ている。

今後拡大が予想されるダイレクトソーシング。利用率が現在の2割強から急伸し、7~8割という「就活の主流」になると、新たな弊害や問題が起こるかもしれない。ただ少なくともそれまでは、就職ナビのみに頼るのではなく、これら逆求人サイトなどのダイレクトソーシングを活用すれば、企業、学生ともにメリットは大きそうだ。

佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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