日本株は日替わりで乱高下

一様でない海外勢のスタンス

10月28日、日本株が日替わりで乱高下を繰り返している。背景には、売買の過半を占める海外勢のスタンスが一様ではないことが挙げられる。写真は8月、都内で撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

[東京 28日 ロイター] -日本株が日替わりで乱高下を繰り返している。決算期が迫るヘッジファンドの利益確定売りが強まる一方で、欧州の年金など長期資金の一部はアロケーションを増やしているとされ、売買の過半を占める海外勢のスタンスが一様ではないのが背景だ。アベノミクスへの評価も割れており、相場を不安定化させている。

<乗り遅れていた海外の長期投資家>

欧州投資家を前週、訪問した外資系証券エコノミストは、欧州周辺国では、年金など長期資金が日本株へのアロケーション(配分)を増やしていたと明かす。欧州系に限らず、長期資金を運用する海外のアセットマネジメント会社などからは「今年前半の日本株急騰には付いていけてなかった。日本株は株価上昇によるウエート増加だけで、ほとんど積み増せていない」(米系運用会社)との声が多い。

実際、東証が公表する主体別売買動向をみると、外国人投資家は10月以降も、日本株を買い越している。第1週こそ111億円の売り越しだったが、第2週は2356億円、第3週は2666億円の買い越しとなった。ヘッジファンドなどが1兆円を超える買い越しをみせていた3─4月の週と比べると派手さはないが、2000億円台のコンスタントな買いが続いている。

10月第4週のデータはまだ明らかになっていないものの、寄り付き前の外資系証券6社経由の注文状況をみる限り、海外勢のセンチメントに大きな変化はないようだ。前週は1480万株、金額ベースでは157億円の買い越しで、第2週の3920万株・608億円、第3週の1550万株・220億円と比べると規模はやや小さくなっているものの、28日も640万株・78億円の買い越しとなっている。

<日本に相対的な安心感>

年金など長期投資家は一度買い始めると、その傾向はしばらく続く。前週後半、日経平均は急落したが、日本に関するネガティブ材料が前週特段みられなかったなかで、長期投資家のセンチメントが劇的に変わるとは考えにくい。「そこまでナイーブ(神経質)ではない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏)という。

海外投資家が好感しやすいポジティブな日本のデータもある。日本の消費者物価指数(CPI)は上昇し、政府がデフレ脱却宣言の目安とするコアコアCPIも水面に浮上してきた。名目金利が日銀の大量国債購入により抑えられる中で、実質金利は低下し、株式などリスク資産に投資しやすい状況となっている。雇用も建設など一部産業ではタイト化してきており、賃金を押し上げるとの期待にもつながってきた。オリンピックに向けた期待も高まりやすい。

政治の安定感も買い安心感につながっている。シリア問題と財政問題で政治リスクを露呈させた米国や、イタリアなど政治的な不安定さが続く欧州との比較で、相対的に評価が高まっている。衆参の「ねじれ」を解消させ、長期政権も見えてきた安倍晋三政権は、「これまでの日本の短期政権の反動もあって、海外勢には好意的に受け止められている」(JPモルガン・アセット・マネジメントのエコノミスト、榊原可人氏)という。

<ヘッジファンドの「変心」に警戒も>

ただ、海外勢の日本株に対するスタンスは一様ではない。前週の日本株急落は、11月20日が決算末であるヘッジファンドから利益確定売りが出たためとみられている。日本株は日経平均の年初からの上昇率が40%と世界の主要株式のなかで断トツのパフォーマンスを示しており、上昇一服感が出る中では利益確定の対象となりやすい。

昨年11月から10兆円以上、日本株を買い越した海外投資家の中心はヘッジファンドなどとみられている。決算前の利益確定売りで済めばいいが、年金など長期投資家に対し、動きが速い彼らがアベノミクスに失望すれば、大きな「逆流」となりかねないことには注意が必要だ。

実際、アベノミクスで最も重要であるはずの成長戦略、「第3の矢」に対する失望は日に日に強まっているという。医療や雇用など日本の将来にとっての重要分野で抵抗勢力に「骨抜き」にされる案件が増えているためだ。

安倍政権が発足してようやく1年が経とうとしているなかで、結果を求めるのは早すぎるとの指摘もあるが、「既得権益を持つ勢力に押されて構造改革が止まるようであれば、何のための安定政権かということになる」(米系証券)という。

「アベノミクス相場」をけん引してきた海外勢だが、生保などは日本株への投資に依然として慎重で、国内勢へのバトンタッチは行われていない。「厚み」が欠けた日本株市場では、引き続き海外勢のセンチメントに左右されやすい展開が続く見通しだ。

(伊賀 大記 編集:田巻 一彦)

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