「志望校合格」へ導いた家族会議のスゴい中身 そのとき父親にスイッチが入った

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5年生に入り、塾のスケジュールはどんどん過密になってくる。平日は夜遅くまでの授業、休日は模擬試験。成績が伸び悩みの時期に入ると、本人も苦しくなって落ち込むこともあった。しかし前回の志望校選びでもめて以来、家族会議はほとんど開かれず、諒珂くんのメンタルケアもすべて美樹さんが1人で抱えることに。

仕事で遅くなる義一さんに「話し合いたい」と持ちかけて美樹さんが相談をし始めても、「まあ、大丈夫じゃない?」と聞いているのかいないのか……、会議をするたびに“自分ごと”として真剣になってくれない夫への不満もどんどん溜まっていった。

「この頃は私が報告をして夫がほとんど興味がなさそうに聞いている、という状態で(苦笑)。夫婦2人で話す時も、息子を交えて話す時も、私が主導で会議をすると全然うまくいかなかったんです。それまでの家族会議といえば、旅行とか年賀状作りとか、夫が議長を務めてみんなを楽しくまとめてくれていたものばっかりだったんですよね。でも、当時は会議の話題といえば受験のことだし、しかも私が状況を説明するだけになってしまっていて。夫も『口を開けば受験の話ばかりだ』と言うのでまたけんかになって……」(美樹さん)

「あの頃、ギスギスしてたよね~。大変だったね、お母さん」と諒珂くんにも労わられる始末。楽しいはずの田中家の家族会議はうまく機能しなくなっていた。

会議の危機!パパが提案した解決策とは?

一方の義一さんは、こうしたギスギスした状況をどう思っていたのだろうか?

「興味がなかったわけではないんですが、ただ塾にお任せしていれば大丈夫だろうと完全に楽観視していました(笑)。中学受験とはいえ、やはり本人の頑張りが何より大事なわけで。スランプとはいえ、『そんなにパニクらなくても……』と思ってましたね」

……。ありがちだ。細かい情報に惑い焦りが募る母親と、状況を把握していない父親。そして1人プレッシャーに耐える子ども。非常にありがちな中学受験期の家族の危機、なのか。だが、義一さんはその楽観的な視点をうまく生かし、ある会議をいつもどおり、自分主導で行った。そのテーマはやはり家族旅行だった。

5年生の夏に行ったシンガポールと、6年生の夏に弾丸で訪れた四国。義一さんお手製の旅のしおりには、スケジュールだけでなく、訪れる場所についての歴史的・地理的解説も盛り込んであった(筆者撮影)

「スランプ真っ只中だった5年生の夏は思い切ってシンガポールへ。6年の夏も一泊でいいからどこかに行こうと夫が言いだしたんです。そのときの家族会議は夫主導で、私や息子が行ってみたい場所、食べてみたいものを聞き出して、プランの冊子まで作ってくれたんです。受験のことで頭がいっぱいだった私も息子も、『旅行なんて行ってる場合じゃない』とは、不思議となりませんでしたね」

このときの会議は、また和気あいあいと盛り上がり、田中家らしい笑い声がリビングにあふれた。6年生の夏休み、「旅行以外はずっと勉強してた」と言う諒珂くんも机から少し離れてリフレッシュ。歴史や地理で学んだ場所を実際に尋ねたり、新しい体験をしたり、最後の踏ん張りに向けてのエネルギーをもらえた。

次ページ直前で「不合格判定」。いよいよお父さんが本気に
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