原宿ロールアイス、話題と行列が続く仕掛け あのハリウッド女優もインスタに投稿

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「ニューヨークではやっているとのことで、どうしても見たくなって現地に飛びました。現地に15ブランドほどあるのですが、6店舗は食べ歩きましたね」(浅野氏)

写真や動画ではオシャレに見えたロールアイスは、実際に食べてみると“ザツさ”が気になったという。

「ある程度力がいるので、男性が作っていることが多いんです。そのせいか、せっかくくまちゃんをデコレーションしているのに、クリームの中に沈んでしまっていたり……。これは日本のほうが絶対うまくできる、と感じました」(浅野氏)

当初は、自分で運営する考えはなく、飲食業のオーナーに声をかけて回った。しかし誰にも相手にされなかったという。プロからすれば、ロールアイスのデメリットが一目瞭然だったからだ。

どんなに手際がよくても、1つのロールアイスを仕上げるのに6~7分かかる。必ずそれぞれ1台の機械(コールドアイスプレート)が必要で、1人のスタッフがかかりきりになるわけだ。ある程度量をまとめて作ったり、流れ作業をしたりというわけにいかないので、確かにオペレーション効率が低そうだ。機械などの初期投資に加え、機械を稼働させるランニングコストもばかにならない。

「これは自分でやるしかない」

「みんなに『効率が悪いから儲からない』と言われましたが、私は反対に、時間がかかるからこそ価値があると思いました。私自身スイーツが大好きなので、自分だけのために手間と時間をかけてスイーツを作ってもらったら、すごくうれしいと感じます」(浅野氏)

「これは自分でやるしかない」と一念発起、勢いに乗って、ニューヨーク視察後2カ月というスピード開店を成し遂げた。コールドアイスプレートを自宅に持ち込み、夜な夜なロールアイスを作って研究した。

「簡単そうに見えますが、意外に難しいことがわかりました。まずアイスの生地をどの程度軟らかくするか。乳脂肪分が多すぎるともっちりしてきれいに丸まらないし、逆に少ないと割れてしまう。“インスタ映え”が魅力の商品だから、写真に撮っている間は溶けずに形状を保っていないといけない。固まり具合はその日の気温にも左右されます。お客様が一気に入店すると人の熱気で固まりにくくなるので、ドアの外で待っていただくこともあります」(浅野氏)

技術の習熟にも時間がかかりそうだ。スタッフは採用後、動画を何度も見て手順を覚えてもらう。ただ、誰にでもうまくできる作業ではないそうだ。特に難しいのが、板状になったアイスをヘラで巻いていく過程。浅野氏は自分で何度も練習したが、今はスタッフのほうがきれいに作れるという。浅野氏自身が作ったという開店当時のサンプル写真を見ると、確かにやや“巻き”が甘い。

「弊社のメニューの場合は、女性のほうがいいんですね。たとえば、ロールアイスの上にお菓子をトッピングするのですが、数ミリの砂糖菓子のハートを『どこに置くといちばん見栄えがいいか』と考えながらピンセットを使ってデコレーションしていくような細かな作業です。かといって力もいるので、うちのスタッフはみんな指にテーピングをしたりして頑張っています」(浅野氏)

次ページ1日に作れる個数は最高で450個ほど
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