JR山手線の色はなぜ「黄緑色」になったのか 「路線別カラー」の始祖は山手線だった

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中央線に導入された101系は「朱色1号」で登場した。現在の中央線に続くオレンジバーミリオンである。従来の電車から大きくイメージを変えた鮮やかな色は多くの人から讃えられたというが、これは「中央線の色」というよりも新性能電車のPRとして塗装した色だった。

首都圏で中央線に次いで101系が投入されたのは山手線だった。1961年のことだ。だが、この時の色は黄色だった。正確には「黄5号」という色で、現在で言えば総武線・中央線各駅停車の色だ。実際、この101系は「つなぎ」的な存在で、山手線にウグイス色の103系が投入されるにつれて総武線・中央線各駅停車へと移っていった。

では、なぜ山手線に投入された101系は黄色となったのだろうか。鉄道雑誌『鉄道ファン』2001年7月号に掲載された元国鉄副技師長、星晃氏の寄稿によれば、この際に黄色の塗装を施したことについて「国鉄らしさを失うことなく、車両外部色の条件である明視性と快適性を備えた色として、当時としては十分思い切ったことではあったが、黄色系を推すことで工作局内の同意がまとまり、局長の賛成も得た」とある。

色は新車のアピールだった

山手線の新型車両E235系もウグイス色のラインカラーを受け継いでいる(撮影:風間仁一郎)

明視性と快適性――いまの車両の「色」にも共通する話だ。まだまだ茶色など暗い色の通勤電車が多かった時代に、新性能電車であることをアピールし、かつ安全面などの観点からも目立つ色として視認性を高めるためには、カラフルな色を塗装するのがいちばんだったのだ。

こうして中央線の101系にオレンジ色、山手線の101系に黄色、そして山手線の103系にウグイス色が塗装されたわけだが、先の星氏の寄稿によると「線区別に電車の色を変える構想は、103系の山手線に通勤型3番目のウグイス色導入のあとであり、このころまではむしろ明視性にすぐれた色を採用したとして、新性能電車のPRに重きが置かれていた」という。

昭和20年代半ば以降、それまで茶色や黒といった暗めの色がほとんどだった鉄道車両にカラフルな塗装が施される例は増えてきていた。「湘南電車」と呼ばれた東海道線の近郊型電車はオレンジと緑の2色で彩られ、新たに登場した特急電車や特急用ディーゼルカーには「クリーム色2号」に「赤2号」の帯が巻いた塗装が採用された。

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