「1人7万円」のベーシックインカムは可能か AIがBIの導入を促進?

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──生活保護制度とのかかわりは。

現行の生活保護制度で実際に給付を受けている人は「有資格者」の2割ぐらいとみられる。もらえるはずの人をこのままほうっておくのか。残りの8割の人にもきちんと給付するとすれば、経費を含めて財源をどう増やすのか。そこまでやっても取りこぼしはかなり出る。いっそ国民全員に給付したほうがいいから、生活保護よりもBIは優れていると見ている。

──労働意欲との兼ね合いは。

井上智洋(いのうえ ともひろ)/慶応義塾大学環境情報学部を卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院で博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済論、成長論。著書に『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』『「人工超知能」-生命と機械の間にあるもの-』など(撮影:梅谷秀司)

今の生活保護はある程度おカネを稼ぐと、給付額が減らされる。労働に対するインセンティブがあまりない。BIだったら、税金は多少払うが、7万円はもらえて基本的に全額が自分の所得になる。別途働けば働くほど稼ぎが増えていく。むしろ労働意欲がそがれることのない制度といっていい。これまでの先進国での実験は5万円から10万円の給付だが、気持ちに余裕ができ、むしろ労働供給量が増える可能性さえある。

──「安上がり」にならないともいわれます。

どういう意味で安上がりというのか。結局、国民全体でのBI負担はゼロ。自分たちが納めたおカネが全体に回っているだけなのだ。個々人にとっては得する人、負担が大きい人が出てくるが。それをもって負担が大きいと考えるべきではない。

財源の確保はメドが立つものなのか

──財源は?

その確保は確かに大変で、所得税だけで調達するなら、税率を一気に25ポイント上げないといけない。今所得税の最高税率が45%なので、足すと70%まで行ってしまう。ほかに財源を考えるとすれば、1つには相続税を30ポイントアップするのはどうか。最高税率が今の55%から85%に高まる。ただ、その税率を適用するような金持ち一族は、残り15%の財産でも娘・息子たちが遊んで暮らせる人たちなのでは。もちろん反発はものすごくあるだろうし、説得は大変で、大きな壁がある。

──ほかにも財源捻出の諸説がありますね。

この税金から何兆円拠出する、何十兆円は公共事業費が削れるとか。実務に携わる政治家や官僚の方々で詰めてほしい。

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