日本人拉致問題、「根本解決」への希望と不安 日本政府が主体的に解決に当たるべきだが…

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問題の一つは、北朝鮮側は、この協議以降さらに調査を続ける考えであったか否かであり、その後の経緯を見ると、どうもそうではなかったと思われる。

2016年2月、北朝鮮は、特別調査の全面中止及び特別調査委員会の解体を宣言しているのだ。つまり、北朝鮮側は、2014年10月の説明が最終的だったと考えている節があるのだ。

また、8名についての北朝鮮側の説明を日本側はどのように受け止めたのか。この重要な点について日本政府が我々国民に何も説明していないことも問題だと思う。

日本は拉致問題解決のため北朝鮮と交渉すべきだ

日本政府が拉致問題の解決について各国に協力を求めるのは当然だが、それだけでは足りない。日本自身の解決努力が第一に必要である。

とくに、特別調査の結果を日本政府がどのように受け止めたかは優れて日本の問題であり、第三国に解決を頼む筋合いのことでない。

日本政府は拉致問題について、「対話と圧力」の考えで取り組むことを方針としている(拉致対策本部「拉致問題における今後の対応方針」)。「圧力」の面では、人道支援の凍結、万景峰92号の入港禁止、北朝鮮のミサイル等に関連する資金の移転防止、すべての北朝鮮籍船の入港禁止やすべての品目の輸入禁止等を講じている。

しかし、「対話」の面では、日本政府はその後、核・ミサイルの実験の関係もあり、「圧力」一辺倒になり、北朝鮮と交渉さえできなくなっている。北朝鮮をめぐる情勢が大きく動こうとしている中、そのような現状は一刻も早く打開して「対話」を再開し、みずから拉致問題の解決に当たるべきだ。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

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みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

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