かつて同僚に裏切られた私が見た組織の実際 組織を「性善説」で捉えるのは楽観的すぎる

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あるとき、ホスピタリティ精神あふれることで有名なサービス業界の社長から、

「わが社の経営会議は味方から銃で撃たれることを前提に、背後の防御を準備していないといけません」

と言われて驚いたことがあります。

カスタマーファーストを宣言し、現場には心震えるようなエピソードがあふれることで有名な会社なのですが、社内の状況は少々違ったようです。

人は裏切られたと思う体験をすると、怖れや恨みや後悔といった感情にさいなまれて、そうした負のスパイラルが仕事に対する活力さえ減少させます。できれば、遭遇したくない経験と言えます。

上司や同僚が裏切らないと思うこと自体が間違い

どうして、裏切りが起きるのか? そもそも、社内で上司や同僚が裏切らないと思うこと自体が、間違っているのかもしれません。

裏切りとは「信頼がある」と思っていた相手から想像とは違った、もしくは期待外れな行為を受けたときに使われる言葉。ただ、そうした信頼という

・上司は自分のために行動してくれる
・同僚は自分に対して協力的である

と、「性善説」を前提にしていることが間違っている可能性があります。

ちなみに先ほど登場したサービス業界の社長は、現在では社内から撃たれる可能性を多少は想定して「君と意見が一致している」と語る同僚が経営会議などで裏切ることも想定して、対応策を準備しているそうです。すると、仮に裏切られても衝撃が相当に少なくショックにさいなまれることはなくなったとのこと。さらに仕事における調整場面で、時間をロスすることも大きく減ったようです。

自分は味方と思っている上司や同僚からも撃たれる可能性を想定しておくことは、仕事で成果を出すために大事なことなのです。

ここまで読んで、無常観ややるせなさを感じる人もいるかもしれません。が、社内の上司や同僚は友人とは違います。あくまで仕事上でかかわっているだけ。過度な期待=あの人は自分を裏切らないという発想は、双方にとっていいものとは限りません(そもそも友人こそ裏切るとの意見も多数あります)。

大坂の陣で、伊達政宗の軍は前線の味方を撃って討死させたと伝えられています。前線より味方が後退し始めたときは、敵と一緒に討たなければ共崩れ(味方の各陣が共に崩れ敗れる)との判断であったようですが、まさか味方から撃たれることは想定していなかったでしょう。

今の時代、命を落とすことは日常ではないかもしれませんが、「平和慣れ」は危険です。親しき仲にも礼儀ありということわざがありますが、

《親しき仲でも撃たれる覚悟せよ》

と可能性をわずかでも想定して、心の準備をしておきたいものです。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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