ハリル騒動でみえた「日本人監督化」の青写真 選手を納得させる指揮官の理想像を検証する

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4月27日に日本記者クラブで行われた会見では予定時間を大幅に超過して、心の内を語ったハリル前監督だった(編集部撮影)

 「コミュニケーション不足を理由に解任されたのは初めて。今まで聞いたことがありません。コミュニケーションがあまりに広い意味すぎて、具体的に誰とか、どういうことかを教えていただきたいと思います」

4月27日に東京・日本記者クラブで記者会見にのぞんだサッカー日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ前監督は無念さと悔しさを繰り返し口にした。日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長の「選手とのコミュニケーション、信頼関係が薄れた」という解任理由に納得できないのは前指揮官だけではない。日本中のサッカー関係者やサポーターに今も後味の悪さが残っているのは確かだろう。

日本人監督へのシフトが有力になりつつある

ただ、すでにハリル体制は終焉を迎え、西野朗監督率いる新体制が始動している。西野監督は目下欧州視察中で、守備リーダーの吉田麻也(イングランド・サウサンプトン)らと面談。今回の経緯とロシアワールドカップ本大会での戦い方などを説明しているという。「日本人のほうが言葉が通じるから、お互いの理解を深めやすい」と前向きに語る協会関係者も少なくない。ロシアワールドカップ後は西野ジャパンの結果いかんにかかわらず、日本人監督でいくべきという機運が高まりつつあるようだ。

哀愁漂う表情で会見場を後にしたハリル前監督(編集部撮影)

実際、日本協会が用意できる代表監督の年俸は2億円程度といわれる。「その金額では世界トップ50の監督は到底、呼べない」とアルベルト・ザッケローニ(現UAE代表監督)、ハビエル・アギーレ、ハリルの3人の招聘に携わった霜田正浩氏(現J2・FC山口監督)も語っていたことがある。

イングランドの名門・アーセナルを21年半指揮し、今季限りで退任するアーセン・ベンゲル監督を次期監督に望む声も聞こえるが、金額的に釣り合わない。「かつて名古屋グランパスを率いた縁でおカネは関係ない」とでも本人が言ってくれない限り、そのクラスの名将の招聘は難しい。それが日本サッカーの現実なのだ。

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