タイ産の「ユーカリ植林炭」が選ばれる理由 現地日本食チェーンで人気、日本向け輸出も

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次に着手したのがウナギ料理の専門店。旅行業の大先輩など日本人2人と手を組み、3人で共同で始めた店は順調な滑り出しを見せたが、2006年に軍事クーデターが勃発。バンコクの機能がストップした環境では店の営業も立ち行かない。売上げが低迷し、谷田貝氏は共同経営から離れる決意をした。

「届けられた200kgの炭」から事態が好転した

炭の仕事を手伝ってほしい。そんな依頼が飛び込んできたのはこの頃だ。

ユーカリの植林地で伐採した木はこの窯で1000℃程度の温度で焼いて炭になる。委託した農民が焼き、一定の基準を満たした炭だけを買い取る仕組みだ(筆者撮影)

「頼まれたことは何でもやろうと考えていましたからすぐに引き受けましたが、日本への輸出を手伝ったにもかかわらず、約束した報酬を払ってくれない。仕方なく手を引いたところで、その業者が炭を納めている問屋から『炭が届かないので何とかしてほしい』という連絡が私の方に入ったんです。事情を聞くと、業者が輸出にかまけて国内の納品を後回しにしていたらしい。そこで、継続した発注を約束してもらった上で、地方の炭生産者から炭を送ってもらうことにしました」

このとき谷田貝氏が発注した炭の量は20kg~30kg。サンプルとしての発注だ。しかし、炭の生産者から届けられた量は200kgにも及んでいた。

「『在庫があったので、200kg持ってきたよ』と言うんですよ(笑)。どうしようかなと思っていたら、問屋に発注していた店が必要していた炭の量がちょうど200kgであることが分かった。全くの偶然ですが、ここからですね、事態が好転し始めたのは」

発注主はタイでは大手の人気日本料理店。この店の成功に続くかのように、日本食レストランが相次いで日本から上陸し、現地で開業する人も急増していた時代だ。幸運が幸運を呼ぶかのように、谷田貝氏のもとにはお客からの紹介で注文が殺到。ようやく同社の事業基盤は整っていく。諦めずにチャレンジを続け、チャンスがあれば誠意を持って対処する。その姿勢が呼び込んだ「偶然」だったのではないか。

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