スマホ決済号砲!脱「現金至上主義」は進むか LINE、ヤフー、楽天、ドコモが続々と参入

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単なる決済だけではない。今注目されているのが、「芝麻(ジーマ)信用」という、アリペイ上の決済や行動のデータを基に利用者の信用力を測るサービスだ。一定の点数があれば、物品レンタルの保証金が免除されたり、ローンの貸し出し上限が上がったりと、多くの利点がある。これがグループ内サービスの利用促進にもつながっている。

店頭のQRコードを客のスマホで読む方式なら店側は端末が不要。小規模な小売店(左)や路上ライブの投げ銭用(右)にも簡単に導入できる

ただ、これを単純に日本に当てはめるのは難しい。そもそも中国でスマホ決済がここまで急速に普及したのは、配車アプリ「滴滴(ディディ)」のようなスマホ決済を基本とする新興サービスが人気を博したからだ。

日本で本当にキャッシュレスは進むか

日本でも決済インフラを整備する一方で、「生活の中の困り事を劇的に解決する魅力的な“使い先”がなければ、発展性は薄い」(業界アナリスト)。芝麻信用のようなスコアリングも、露骨な評価が拒否反応を生む可能性がある。

スマホ決済・キャッシュレス化の流れは、政府も後押しする。経済産業省は昨年12月、キャッシュレス決済(クレジットカードや電子マネーも含む)の割合を、現行の20%弱から2027年までに40%まで引き上げる目標を設定。東京五輪などでの訪日客の決済需要への対応も念頭にある。

商機をつかもうと、独立系のプレーヤーも奮闘する。2012年創業の金融ベンチャー・オリガミは、2016年からスマホ決済サービス「オリガミペイ」を提供。オリガミペイで決済すれば現金での支払いより安く買える、という仕組みを作り、わかりやすいメリットで訴求し、利用者を拡大してきた。

「自分たちは金融サービスに主眼を置く会社。自社で技術や知見を抱え込むのではなく、地方銀行や流通、カード会社などをパートナーとしてオープンに共有することでビジネスを広げていく」(同社の古見幸生マーケティングディレクター)と、自社経済圏を拡大するのとは別の道での成長を模索する。

ネット企業の思惑だけではキャッシュレス化は進まない。人手不足に悩む飲食・小売店には手数料の安さや簡便性の点で訴求する必要がある。“現金主義”が根強い日本の消費者マインドを変えられるか。日々アプリに触れる若い世代の開拓がカギとなりそうだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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