シンパで固めたトランプ政権の暴走が始まる いよいよ真のトランプ劇場が稼働
電撃的な米朝首脳会談の決定や、中国に対する貿易制限措置の発動など、ドナルド・トランプ米大統領発の衝撃的なニュースが後を絶たない。単独でも歴史的な大事件が次々と発生する現状に、米国のみならず世界が右往左往している。
「(トランプ大統領は)楽しんでいるはずだよ」
トランプ政権誕生の立役者といわれるスティーブ・バノン前首席戦略官は、未曾有の混乱をこのように評価する。トランプ大統領にとって、自由気ままな言動で混乱を巻き起こし、世界の注目を一身に集めている現状は、政権運営の主導権を取り戻した証拠に他ならない。ロシア疑惑の調査などで、専ら逆風にさらされていた時とは趣が違う。
ついに「自分好みの政権」になった
トランプ大統領の気ままな言動を可能にする仕掛けが、大胆な人事刷新である。ゲイリー・コーン前経済会議委員長やハーバート・マクマスター前安全保障担当大統領補佐官など、トランプ大統領に正面から反論できる重みのある人たちは、追われるように政権を去った。豊富な国際経験を持ちながら、トランプ大統領と意見や気質が合わなかったレックス・ティラーソン前国務長官は、ツイッターで解任を知らされた。
後任の選出は、トランプ大統領自らが指揮を執る。その狙いは、「自分好みの政権」に作り替えることだ。国家経済会議委員長の後任をラリー・クドロー氏に打診したのは、トランプ大統領の独断だという。政権の人事に責任をもつジョン・ケリー首席補佐官がクドロー氏と面会できたのは、大統領による打診から1週間も後のことだった。
トランプ大統領が求めるのは、自らの方針を忠実に実行に移すスタッフであり、メディアでトランプ大統領の業績を称える広告塔である。ティラーソン長官の後任に指名されたマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官は、トランプ大統領と気脈を通じていることで知られる。クドロー氏やマクマスター補佐官の後任に選ばれたジョン・ボルトン氏については、コメンテーターとして活躍する両氏のテレビ映りの良さを、トランプ大統領が評価しているようだ。
鎖から解き放たれたように、トランプ大統領は自らの直感を行動に移している。ロシア疑惑を捜査するロバート・モラー特別検察官へのツイッターでの名指しの批判(3月18日)や、ロシアのウラジミール・プーチン大統領への再選を祝す電話(3月20日)などは、いずれも側近の助言を無視した行動だったといわれる。3月23日には、トランプ政権との協議のうえで議会が可決した2018年度予算に、藪から棒に拒否権を発動する意向を示し、ジェームズ・マティス国防長官等が、慌てて説得に乗り出すドタバタ劇もあった。
解き放たれたトランプ大統領は、持論である「米国第一主義」を、これまで以上に推し進めようとするだろう。発足から1年強を経て、いよいよ真のトランプ政権が稼働しようとしている。
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