ゾゾ幹部の「バラマキ送金」に隠された"火種" ポケットマネーであれば問題ナシなのか?

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可能性としては、「誘導しているサービスへの関与を明らかにした人、あるいはそうであることが明らかな場合、その自社のサービスや商品のプロモーション、あるいは会員情報を集めるなどの目的だと客観的に判断できる場合、“完全に個人とはいえない”と指摘されるリスクはある」という。

すなわち、原則論から言えば景品表示法違反ではないが、表面上の情報と実態が乖離している場合(つまり個人の発言とは受けとれない可能性を残す場合)は問題になりえるということになる。

新たな問題を引き起こす火種になる可能性

中島・宮本・溝口法律事務所の中島章智弁護士は「所属企業からの指示や希望の表明、資金の流れ、その他の事情から総合的に判断して、実態は会社の実行と同視できる場合もありうる」と指摘する。

たとえば、今回送金にかかった費用を賞与などに含めて会社が田端氏に支給したとしても、外からは正確に状況を追うことは困難だろう。

筆者の問い合わせに対し、スタートトゥデイ広報は「本件について現状当社といたしまして、役職員が行っているSNS上での発言・行動は、当社の見解を表明しているものではございませんが、当社スタッフがSNS上でお騒がせいたしましたことを認識しております。再発防止のため、社内スタッフによる誤解を招くSNS上での言動について社内で注意喚起を行ってまいります」と回答。田端氏発言との関連については否定している。

すでに、この話題は沈静化しており、田端氏の事例が景品表示法違反として大きな問題になることはなさそうだ。むしろ、結果だけを見れば肯定的に見る視点もある。視点を変えれば、表向き気にせずに堂々と“個人の行為”と主張していれば問題になりにくいともいえるだろう。リスクは高いが“ノイズを起こして注目を集める”ことを狙い、より巧妙な手段でSNSを通じた影響力を行使しようとするケースも今後出てくる可能性はある。

手軽かつ手数料も少なく、本名も住所も知らない相手に簡単に送金できる――SNSを通じた送金の利便性は高いが、一方で将来、新たな問題を引き起こす火種になるかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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