平昌パラリンピックの「知られざる」楽しみ方 3月9日開幕、18日まで10日間続く熱戦

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では、なぜ日本はこれまで、パラリンピックでメダルを多く獲得することができなかったのか? 

まず、他の国々が障害者スポーツの強化に取り組んでいる時期、日本は厚生労働省管轄だったため、本格的なスポーツとしての強化予算がつかなかったことが、その大きな要因である。人々の最低限度の生活を保障して社会参加を促すことを主たる目的とする厚生労働省では、スポーツの強化に回す予算についてはその大義がなく、その結果、日本は障害者スポーツの強化に後れをとってしまったのだ。ちなみに、現在では障害者スポーツはスポーツ庁の管轄となっている。

また、日本は世界でもまれな平和な国だが、そのため戦争による負傷者はいない。さらに、交通事故も年々減っていて、労働災害も減少中。つまり、障害者スポーツの選手になるような人が少なくなっているのだ。それ自体はすばらしいことではあるが、競技に出る人が少なくなれば、メダル獲得数が減ってしまうこともまた、やむをえないだろう。

障害者スポーツに対するこれまでの予算の少なさと、競技人口の少なさが、日本がパラリンピックでたくさんのメダルを獲得できなかった、ふたつの大きな理由といえる。

メダル獲得数だけではない、パラリンピックの楽しみ方

先に述べたとおり、パラリンピックで日本人選手のメダルラッシュが実現することは難しく、それは平昌大会でも同じだろうと予想されている。

必ずしも日本人選手のメダルラッシュが期待できないとしても、何か他に、楽しみ方はないだろうか?

パラリンピックの一種目であるチェアスキーでは、日本のメーカー製のフレームが大きなシェアを占めている。そこで、たとえば日本人選手であるかどうかには関係なく、日本のメーカー製のチェアスキーを使用した選手が、どれだけメダルを獲ることができるかなど、違った視点での楽しみ方もあると考えている。日本の技術力が、世界でどれだけ通用するのか、パラリンピックの世界でも、それを追求する楽しみ方もあると思うのだ。

そうはいっても、やはり日本人選手の活躍は気になるところ。日本人選手のメダル獲得の可能性についても探ってみよう。

平昌大会にあたっては、前回のソチ大会のときと比べて、日本人選手に対する資金面や人材面などのサポート体制が、格段によくなっている。たとえば、これまでは選手が海外で合宿をおこなうことは、資金面から難しい面もあったが、国の手厚い支援や多くのスポンサーがつくことによって、それが容易になったのだ。これは、選手の技術力向上に大きく貢献することになった。また、公式競技で活躍するワックスの専門家が、スキー板の手入れに協力するなどの、人的なサポートも予定されている。これらの充実したサポート体制が、どれだけ結果に結びつくかにも注目したい。

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