「授乳フォト」を渋谷の中心で撮影するワケ 子育てはもっと自由でいい

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(左)櫨畑さんのお子さんを抱くカメラマンの望月聡子さん(右)櫨畑敦子さん(写真:Kaori Sasagawa)

「あ、子どもって1人で産めるんだ」

望月さん(以下:望月):私は職業としてカメラマンをしているのですが、ライフワークとしては既存の社会に囚われない活動をしている方を作品として撮っていて。そんなとき、知人のSNSの投稿で櫨畑さんの存在を知ったんです。

私自身も、結婚について考えたり、婚活をしてみたりしていたのですが、結婚するのはハードルが高いように感じていました。でも、「子どもはいつか欲しいな」と漠然と思っていたときに櫨畑さんのことを知って、「あ、子どもって1人で産めるんだ」というのが新鮮でした。希望というか、突破口のように感じて。

――2人の感性が共鳴したわけですね。そのあと、すぐに授乳フォトを?

「不便やな」って呟いたら…(写真:Satoko Mochizuki)

望月:いえ、最初に会ったのは、まだ赤ちゃんがお腹の中にいる2017年8月で、そのときはマタニティフォトを撮らせてもらいました。授乳フォトの話が出たのは、11月に美術館で会ったときですね。

櫨畑:ある施設で写真を撮ってもらって、「そろそろ授乳の時間だな」と思って周りを見渡したら、ゴツゴツした1人掛けの不安定な椅子ばかりで抱いた赤ちゃんを授乳できるようなソファ席が全然なくて。

授乳用のケープを広げられるスペースがないので「不便やな」って呟いたんですよ。そしたら、望月さんがその言葉に反応してくれて。

望月:「そもそもね、これは赤ちゃんの食事だからケープで隠さなくてもいいと思っているんだけど」と言っていたのが特に印象的で。「大人は好きなときにご飯を食べられるけれど、赤ちゃんはそうじゃないし、授乳はこの人(子)にとって生きのびるための食事なんだから」って。

私には子育ての経験はないけど、隠すのが当たり前だという意識は身についていたので、櫨畑さんの言った「赤ちゃんの食事」というのが新鮮で。だけど、素直に「そうだな」と腑に落ちたんです。

櫨畑:そこから「授乳フォト撮ろうよ」と望月さんが言ってくれて、私も「やりたかってん!」って。

特に大それたことをしたいわけでも、何かのためにやったわけでもなく、撮りたかったから撮ってもらって、きれいに撮れたから(Facebookに)投稿したって感じなんですよね。

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