ストレスを飲酒で抑え込むのが危ないワケ 耐性を高めるためには有酸素運動が有効だ

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具体的には、「ランニングやスイミングなどの有酸素運動を週に2、3回、20~30分続ける」とストレス耐性が養われると、今の科学では唱えられています。

このときの運動のペースとしては最大酸素摂取量が70%ほどの「やや息がきれるくらいの運動」が良いとされていて、やりすぎは逆効果との研究も上がっています。

「筋肉トレーニングは効果がないのか?」という疑問についても調査が行われていて、遺伝子操作で筋骨隆々にしたマウスのコルチゾール値は低いことがわかっています。しかし、人間が筋肉トレーニングによってストレスへの抵抗を高められることは実はまだ実証されていません。

現時点では、筋肉トレーニングでストレス解消を図りたいのであれば、筋トレ+ランニングなど、有酸素運動も取り入れたメニューがお勧めです。

世界中で相次ぐ「思春期のストレス」研究の報告結果

有酸素運動は思春期の子どもにもお勧めです。思春期といえば何かとイライラする人生の一時だと思われがちですが、彼らがイライラするのには、理由があります。それは、脳の発達がアンバランスだからです。

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実は、ストレスを感じる扁桃体の仕組みは17歳までにほぼ完成しますが、ストレスを抑える仕組みは25歳くらいになるまで完成しません。不安を引き起こす部位が十分に発達していても、それを抑える部分が未発達となれば、当然ストレスは溜まっていくことに。こういった思春期の子どもに対しても、運動は絶大な効果をもたらします。

南米チリでの中学3年生200名を対象にした調査では、10週にわたって有酸素運動をメインとした定期的な運動プログラムを実施したところ、幸福感や自信が増し、健康状態も回復したそうです。

対象となった子どもたちは貧困地域という「ストレスフル」な状況で暮らしていました。この結果が、日本の子どもたち、そして生産性に悩む大人たちに当てはまらないわけがありません。

アンダース・ハンセン 精神科医

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Anders Hansen

スウェーデンのストックホルム出身。カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)で医学を、ストックホルム商科大学で企業経営を修めた。現在は精神科病院に上級医師として勤務するかたわら、多数の記事の執筆を行っている。ラジオやテレビでも情報を発信、講演活動も精力的に行っている。

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