「自動運転車」の事故、誰が責任を負うのか 被害者への補償方法など普及には課題が山積

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こうした中、事故原因を調査したうえで自動車メーカーに責任がある場合は、損害額の全部または一部を損保からメーカーに求償(請求)できる仕組みが国交省の研究会で検討されている。自動車メーカーは自社製品の欠陥に備えて生産物賠償責任保険(PL保険)に加入する必要性も出てくるだろう。

事故原因判定には専用機器活用も想定

事故原因の究明について、国交省は欧米の新車に搭載が広がるイベント・データ・レコーダー(EDR)などの活用を想定。事故時の車両の速度、衝突の大きさ、エンジン回転数、ブレーキ操作の有無などを記録し、事故の原因が人的な操作ミスなのか、システムに由来するものなのかを判定しやすくする。研究会ではEDRのデータを読み取るための独自動車部品メーカーの機器も紹介された。

さらに円滑な求償のために、航空機や鉄道の事故原因調査を行う運輸安全委員会のような、国の調査機関の新設も検討されている。

先述した求償のスキームはあくまでも自賠責保険や自動車保険の対人賠償保険など人に対する補償を想定したものだが、これだけでは十分ではない。「(自動運転車の普及過程においては)他人の車両や物への損害に備える自動車保険の対物賠償でも実効性の高い求償の仕組みが必要」と三井住友海上自動車保険部の小林慎哉課長代理は強調する。

政府のロードマップは2020年をメドにレベル3の車の市場投入、2025年をメドに高速道路でのレベル4実現を目標に掲げる。消費者が安心して自動運転車に乗るために、事故時の責任の所在や求償スキームを早急に確立する必要がある。

高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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