東芝社長「テレビは下期黒字化を狙う」 東芝・田中久雄社長インタビュー

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10月3日、東芝の田中久雄社長(写真)は、記憶用半導体のNAND型フラッシュメモリーの主力拠点である四日市工場(三重県四日市市)増設分への設備投資は「今年度中のできるだけ早い段階、できれば今年中に見極めたい」と語った。都内で8月撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

[東京 3日 ロイター] - 東芝<6502.T>の田中久雄社長は3日、ロイターとのインタビューで、記憶用半導体のNAND型フラッシュメモリーを生産する四日市工場(三重県四日市市)の拡張部分への生産設備の投入時期や規模について、早ければ年内にも判断する意向を明らかにした。

赤字が続くテレビ事業の構造改革は9月末発表分で打ち止めとし、今下期に黒字化を目指す考えを示した。

同社は今年8月、300億円弱を投じて四日市工場第5棟の増設に着手。2014年夏に完成する予定。設備投入や生産開始の時期などは「市場動向を見ながら決める」という従来のスタンスに変わりはないが、田中社長は「建物ができた時に設備も入っていて、すぐ稼働というのがベストシナリオ」とし、「今年度中のできるだけ早い段階、できれば今年中に見極めたい」と述べた。

設備投資を1度で行うか段階的にするかも「市場と対話しながら」判断するが、設備投資額は同工場の合弁相手である米サンディスクと折半して最大で4000億円を計画している、と語った。投資減税といった安倍政権の経済対策は「確かに追い風にはなるが、それがあるからといって(投資を)早めるなどの決定的な要因にはならない」とも述べ、あくまでも判断には市場動向などが重要だとした。

スマートフォン(多機能携帯電話)やタブレット端末の需要拡大により、NANDの注文は下期に入って「増えている」と説明。また、これまで特定企業に集中していた供給先の分散化を進めているほか、安定した需要が見込まれるエンタープライズ向けSSD(ソリッドステートドライブ)など用途も拡大しており、「1年以上前に比べるとポートフォリオは非常に強くなっている」と語った。

7―9月期のテレビ赤字は縮小へ

テレビ事業の構造改革は、機種数削減などを発表した今年7月に続き、9月末にも海外拠点の縮小などを発表。田中社長は「これが最後の改革」として、目標に掲げている「(今年度)下期黒字化のめどを立てる」と強調した。同事業は前期に2年連続で500億円規模の赤字を計上している。

海外拠点の縮小ではインドネシア、ポーランド、中国にある自社工場のうちどの拠点に集約するかは最終調整中だが、インドネシアが有力とみられ、エジプトにある現地家電メーカーとの合弁と合わせて2拠点体制となる。国内での自社生産はすでに撤退している。

海外生産委託先は7月に従来の3分の1に絞り込んだばかりだが、今回さらに減らして「1社にする」。量を1社にまとめて発注することでコスト削減や在庫管理面などでの効率化を図る狙いだ。自社工場は高画質の「4K」テレビやアジアで展開している低消費電力の「パワーテレビ」などの差異化商品の拠点とし、生産委託先ではそれ以外のコモディティ商品が中心となるという。

不採算のためテレビ販売をとりやめる海外10数カ国での台数規模は、2013年3月期の販売計画1100万台のうち「10%くらい」に相当するが、「台数を追いかけるつもりはなく、黒字化を最優先する」。販売計画のうち付加価値品の比率は「最低半分以上」にしたいといい、現行から半減した約3000人の体制と合わせて「最低限、黒字化するために必要なレベル」とした。

また構造改革と同時に、拡販に向けた施策も強化。田中社長は「8月ごろから手を打ってきており、その効果が出てきている」と話した。8月、9月の平均売価が上昇しているほか、46インチ以上の大画面の国内販売シェアも「ここへきてかなりぐっと上がってきている」と指摘。7―9月期は赤字は残るものの、在庫削減も進んでおり、「下期黒字化のトレンドには乗っている」と語った。

10月1日付の組織再編では、BtoC(消費者向け)事業をまとめるため、テレビと白物家電を同一グループにした。田中社長は、これからは通信機能を持つスマート家電などの点から白物家電とテレビの「技術の共通性が重要視されてくる」と説明。これまで別々だった開発拠点を同じ場所にすることで、進みにくかった技術の共有化や人的資源の有効活用などを図る。また、テレビ技術はヘルスケア・社会インフラ分野での活用も全社的に進めるとした。

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