39億杯売れた「セブンカフェ」を刷新するワケ 豆の使用量を1割増やし、「抽出方法」も変更

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というのも、セブンを筆頭にコンビニ各社では客数の減少傾向が顕著になっているからだ。セブンの既存店売上高は2017年10月に前年同月比0.5%減となり、連続増収が62カ月で途絶えた。客数に至っては公表している直近の2017年12月まで6カ月連続で減少している(図表)。

ある競合首脳は「国内のコンビニ店舗数は飽和に近づいている」と吐露する。が、セブンは今後も一定数の出店を継続する方針を掲げており、2019年度までには未進出先である沖縄県への出店も計画している。客数が減少する中、出店を継続していくうえでも、主力商品であるセブンカフェの刷新は欠かせないというわけだ。

次のヒット商品を生み出せるか

今回のコーヒー刷新によって、併売率の高いパンやサンドイッチ類などの売り上げ増といった効果も期待される。昨年春、セブンは朝4時~11時の間、セブンカフェのコーヒー(レギュラーサイズ)とパン1つ(指定の8種類から選択)が通常より割安に購入できるキャンペーンを実施した。コーヒー刷新の効果を最大限に生かすためには、こうした販促を今後も実施できるかがカギとなるだろう。

セブン‐イレブン・ジャパンの商品本部でファストフードや総菜などを統括する高橋広隆マネジャー(記者撮影)

全日本コーヒー協会によると、コーヒーの国内消費量自体は2016年に47.2万トンと過去最高を記録。2017年も過去最高レベルを維持したという。こうした環境下で、競合のファミリーマートは「ファミマカフェ」、ローソンは「マチカフェ」という名前でカウンターコーヒーを展開している。両社とも、ブレンドコーヒーの刷新や、商品ラインップの拡充に力を入れている。

高橋マネジャーは「セブンのコーヒーは老若男女、全方位的に支持されている。店舗数も2万店となり、客へのメッセージを強くするためにもコーヒーを変えることはとても意義のあること」と強調する。

ただ、セブンカフェ以降、目立ったヒット商品を出てきていないのも事実。一時はコーヒーとの併売を狙ってドーナツを大々的に訴求したが、最近ではカウンター周りには置かれていない店舗も見受けられる。セブンカフェ刷新による客数増に加え、コーヒーに次ぐ”マグネット商品”を打ち出せるかが、今後のセブンの課題と言えそうだ。

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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