やんちゃ坊主はもう卒業、収益化に邁進するユーチューブ

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 NBCやCNNなどは早くから専用チャンネルを設けていたが(NBCはその後閉鎖)、その後もコンテンツパートナーは増え続け、今ではその数は「何千単位」(キング氏)に上るという。日本でもスカイパーフェクト・コミュニケーションズが専用チャンネルを設けたほか、NHKも動画配信に乗り出した。角川グループホールディングスも「ビデオID」を利用して、広告の掲載に乗り出した。

導入当初は「違法動画削除ツール」と見られていたビデオIDだが、実際は「利用する企業でも90%以上はビデオの削除を要請しない。つまり、システムを削除用ではなくて、収益ツールとして利用できないかと考えるようになっている」とキング氏は話す。

アップされた数を基に番組の人気度を測るメディアも出てきた。「せっかくアップしてくれるファンがいるのだから、削除ではなくアップを促しながらコミュニティを作って、視聴者拡大につなげることもできる。国内でしか放送されていない番組がユーチューブに掲載されることで、世界中に知れ渡ることもあるはずだ」(キング氏)。

しかし、メディア企業との関係も一筋縄ではいかない。依然、MTVなどを傘下に持つバイアコムとの訴訟を抱えるほか、「ネット配信経由の視聴が増えるにつれて、やはり自社サイト経由で動画を流すべきではないか、という“揺り戻し現象”が起きている」(米メディア企業幹部)。

根本的な問題もある。ユーチューブはもともと、ユーザーが好きな動画を掲載してそれを「広告フリー」で視聴できるからこそ人気が爆発した。しかも、乱暴に言えば著作権違反動画も容易に見られる“怪しさ”がユーザーを引き付けた側面もある。ユーザーと広告主の使い勝手。その微妙なバランスをどう調整していくのか。大人になったユーチューブの技量が試される。

COLUMN 日本の民放との提携も間近か

昨年6月、日本版ユーチューブの第1号パートナーの1社として公式チャネルを開設したスカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)。同社ネット&モバイル部の高井衞部長はこの1年余りを振り返り、「番組のプロモーションということではまずまずの成果を上げている。特に宣伝費用を掛けられないような番組のプロモーションに向いている」と評価する。再生回数をはじめ細かいデータを見ればどのようなコンテンツが興味を集めるのかを知ることもできるうえ、コメントの書き込みも1つの声として参考になるという。ただサイトに広告を掲載し、その収入をユーチューブとシェアするプログラムについては参加しないと言う。「スカパーはもともと有料放送。プロモーションに徹したほうがいい」。

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