やんちゃ坊主はもう卒業、収益化に邁進するユーチューブ

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やんちゃ坊主はもう卒業、収益化に邁進するユーチューブ

カリフォルニア州サンブルーノ。グーグルが本社を構えるマウンテンビューから車で走ることおよそ30分。坂が多く高台から海を望めるこの静かな街にユーチューブの本社がある。

近隣から今年2月に移ったばかりの新本社の外観はまるで巨大な体育館のようだ。が、一歩足を踏み入れると無骨な外観とは正反対の「ユーチューブワールド」が広がる。赤いパラソルの食堂、ギターが並ぶ“音楽室”、従業員のキュービクルを挟んで突如現れるガーデン--。大学のキャンパスというより、まるで遊園地だ。「ここはグーグルよりさらにおおらかな社風なの」と案内してくれた社員は言う。

少額ネット決済のペイパル社で同僚だったチャッド・ハーレー氏とスティーブ・チェン氏がユーチューブを立ち上げたのが2005年2月。友人同士がネット上でビデオを共有できるように作ったはずが、人気テレビ番組の映像が掲載されたことで瞬く間に利用者が急増。サンフランシスコ市内のピザ屋の2階にあった小さな会社は、あっという間にシリコンバレーでいちばんホットな会社になったと同時に、次々と番組を掲載されるメディア企業の宿敵となった。

そこへグーグルが現れた。06年10月にグーグルにとって最大の買収額(当時)となる16・5億ドルを積んでユーチューブを獲得したのだ。

大統領選挙ではメディアとして認知

グーグルにとってユーチューブは特別な存在だ。数多く買収した企業の中で、オフィスを別に構えて実質的に“独立”運営しているのはここだけ。「ユーチューブはすでに世界的に名の通ったブランド。うまくいっているところは好きにやってほしい。それに必要なグーグルの技術やストレージ能力、人材などは何でも使えばいい」とグーグル出身で、広報業務を統括するリカルド・レイエス氏は言い切る。

“特別待遇”の一方で、グーグルのえりすぐりの精鋭を送り込んで、ユーチューブの収益化に全力で取り組んでいる。従来の検索連動広告以外の収入源拡大を急ぐグーグルにとってユーチューブの収益化は将来の成長のカギを握るといっても過言ではない。広告戦略拠点のニューヨークが目下力を入れるのもユーチューブの広告販売だ。そのためには、一も二もなく、著作権違反コンテンツの掲載を許しているという“グレー”なイメージの払拭と著作権保護の強化、そしてメディア企業との提携が欠かせないのである。

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