アニメの可能性を広げる「ネット配信」最前線 「大人アニメ」への期待が高まっている
Netflixの『シドニアの騎士』が意味するもの
2015年9月に日本上陸を果たしたNetflixは、その直前に日本のアニメ『シドニアの騎士』(注:『シドニアの騎士』=2014年4月クールでTBS系列で放送されたフル3DCGのSFアニメ。15年4月には2期(続編)が放送された。アニメーション制作はポリゴン・ピクチュアズ。完成度の高い独特な世界観とストーリー、手描きでは不可能な激しい動きなどで多くのファンに支持された)を世界独占配信し、記者会見でもそれを強調するなど、当初からアニメに力を入れていることが窺えた。NetflixのPR担当ディレクターの松尾崇氏によれば、『シドニアの騎士』は、同社が真剣にアニメに取り組む、いわば礎的な存在だったという。
大人の鑑賞に堪えるアニメが支持されているのは、世界のなかでも日本独特の現象だ。海外でアニメ映画を楽しむ構図は、ディズニーのアニメを子どもに見せるために大人が一緒に行って、(ついでに)自分も楽しむという光景しかない。一方、日本ではどうか。16年に大ヒットした『君の名は。』を、子どもと一緒に見に行くという光景は想像できるだろうか。海外では、このような“大人だけ”をターゲットにしたアニメ作品はほとんど存在しない。大人のアニメファンはごくごく少数なのだ。
日本のアニメは大人をも虜にする。これにいち早く気づいたのがNetflixであり、そのきっかけになったのが『シドニアの騎士』なのだ。アニメファンでなくても、この作品を見れば面白いと思うはずだ。ところが海外では、この面白さを知らない大人が大多数だ。だから「大人が楽しめるアニメ」という新たなジャンルを立ち上げれば、新たなユーザーを獲得できる。Netflixにとって日本のアニメは、全世界で新たなユーザーを開拓する強力なエンジンとして期待されている存在なのだ。
前出の松尾氏も、「日本アニメのターゲットはまったくアニメを見たことのない人たちで、『シドニアの騎士』は、アニメを子どもだけのものではなく、大人でも楽しめると気づかせてくれたという意味では、マイルストーン的なものでした」と話す。
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